大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


2016アナリストランキング雑感A
企業アナリスト総合部門の上位アナリスト

【No.0034】
2016.04.01
総合1位は本当に凄い。渡辺氏と村木氏は甲乙つけがたい
アナリストランキングの企業アナリスト総合部門については、日本の全アナリストの中の上位という意味で、そこにランクインすることは非常に価値が高いと考えている。
今回の総合1位は、2年連続でみずほ証券の渡辺英克氏であった。これは順当な結果と思われる。彼の守備範囲は、ヘルスケア関連を中心としながらも、広くサービス関連のセクターに及んでいる。その意味では、日本株を運用しているファンドマネジャーで、彼の話を聞く必要がないと考える人は誰もいないと思われる。私は、彼と初めてお会いした数年前、彼のぶ厚い資料に基づいたプレゼンテーションを受けたとき、当時の担当セールスに「あの人は数年後にトップを取るよ」と言ったことを覚えている。その人が、こうして総合ランキングで1位となったことに関し、心よりおめでとうと申し上げたい。
総合ランキング2位はドイツ証券の村木正雄氏である。彼は、かつて総合ランキングで1位を取ったこともあり、彼もまた上位ランクは至極当然の結果であると思われる。彼にとっては、2年連続2位ということで、嬉しい気持ちよりも悔しい気持ちが勝っていると思われるが、私は1位の渡辺氏とは甲乙をつけ難い程に彼のクオリティは高いと考えている。私も、彼と同じ金融セクターを見ていた人間であるからこそ、彼の凄みは誰よりもわかると思っている。
なお、4位のみずほ証券の高橋俊雄氏と5位の三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小場啓司氏のランクインも興味深い。二人とも優秀な小売アナリストであるが、小売担当アナリストがベスト5に2人入ったという事実がここ1年の小売セクターの重要度を示していて面白い。また、今年から、小売セクターが一本に統合され、本来であれば二人とも各部門で1位になれる実力を有しているが、今回は小売セクターで小場氏1位、高橋氏2位と総合部門とは逆の順位になっている。来年の動向が注目される。

私の優秀アナリストを見る尺度は、「自分が戦って勝てるか否か」
私は、現在ファンドマネジャーであることから、多くのアナリストと面談したり話を聞いたりする機会がある。そして、有能だと感じるアナリストは極めて多い。一方で、そのように有能なアナリストと出会うと、私は、「もしこのアナリストと同じセクターの担当となったら、勝てる可能性があるか?」を常に考えるようにしている。というのも、通常は、どのようなアナリストでも得手・不得手があり、何らかの方法で対抗する手段があると考えるからだ。これは企業戦略を考えることと似ているので、良い頭の体操になるのだ。ちなみに、私は、アナリスト時代、当時同じセクターで競合していたアナリストの得手・不得手・特徴を大まかに押さえ、担当セクター内の企業やテーマ等について各アナリストがどのような判断を下すかの想定もしながら、自分の仕事を行っていた。具体的には、自分の意見が他のアナリストと大差なさそうなら適当に手を抜く一方、自分の意見に確信を持ちそれが少数意見になることの見極めがつけば徹夜も辞さず詳細なレポートを書くなどしていた。それにより、「絶対的に」ではなく「相対的に」勝つことを心がけたリサーチを行っていた。そうした視点を、現在は金融以外のセクター以外のアナリストに対しても使わせてもらいながら、大変失礼ながらも、各アナリストを見させて頂いている。つまり、自分がそのアナリストと戦った場合に、勝つための何らかの突破口があるか否かを見ているということである。

自分が戦いたくないアナリストとは…
もちろん、優秀なアナリストの大半は、勝つのが容易ではないことをここでは強調しておきたい。あくまでも、勝つための突破口を見つけられるかどうかに主眼を置いているとご理解いただきたい。
そうした中で、「これは勝つのは極めて大変だ、できれば同じセクターでは戦いたくない」と最初に思ったアナリストは、前述の村木氏である。彼のグローバルにわたる金融分析、保険セクターで示される知見などは、質的に深く量的に広範なものである。私も金融セクター担当だったこともあり、彼のセクターについては誰よりも厳しい目で見ているつもりであるが、だからこそ彼の凄みがより強く実感される。「同じ時期にアナリストをやってなくて良かった」というのが私の率直な気持ちだ。野球界で例えるなら、イチロー選手を超えて、大谷翔平選手といったところであり、これまでのアナリスト業界で類を見ない突然変異的な存在のように思えるのである。
最近、それに近い感覚を持ったアナリストは、みずほ証券で家電・AV機器を見ている中根康夫氏だ。彼は、ドイツ証券時代の同僚であるが、当時はセクターが異なっていたこともあり、需給をしっかりと詰めて分析しているな、という程度の認識しか持っていなかった。しかし、私がバイサイドに転じて、彼の話を聞き彼の資料の中身を見ると、その分析の細かさと分析対象地域の広さが再認識され、大いに驚いた。中根氏の率いるみずほ証券のテックチームは、いち早くiPhone6Sの売上鈍化を示唆し、iPhone7の動向まで合理的な範囲で予測していたが、概ね彼の予想する形になっているという印象だ。
そのような意味で、来年のアナリストランキングでは、渡辺氏、村木氏、三位の野村證券の斎藤克史氏に中根氏が絡む形での首位争いを私は予想している。
なお、エコノミスト部門で、佐治信行氏が率いる三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチームが圧倒的存在感を示している点も指摘しておきたい。「企業アナリスト総合」部門は、エコノミストは対象外になっていると思うが、実際には同チームの実力と存在感は、企業アナリスト総合部門のトップランカーに勝るとも劣らないと私は考えている。

大木昌光


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