No.0039

期待を裏切らない銘柄の希少価値

今回の中間決算では、世界的に下向きの景気サイクルと米中貿易摩擦の深刻化で、もともと厳しい企業業績が予想されていたが、概ねその方向性での推移となっている。製造業に関して申し上げれば、1Q決算までは強気だった半導体製造装置関連の銘柄の下方修正を筆頭に、期初業績前提比で大幅な円安というアドバンテージを得ながらも、期初予想通りならかなり良い方で、下方修正含みの決算が続出している。その中で、信越化学、村田製作所、キーエンス、日本電産といった会社は、向かい風の事業環境の中でも堅実な決算を出している。まさかの時の友が真の友であるのと同様、事業環境が悪くなった時にこそ、企業の真価が表れる。こうした企業には、通常の企業では見られないような、隠された努力の積み重ねがあるはずだ。素直に敬意を表したい。
ところで、不思議なもので、世界経済が減速し企業の事業環境が悪化したときに限って、色々な問題が積み重なってくる。投資用不動産業界における書類改ざん問題、KYBの免震・制震用のオイルダンパーの性能不足問題、通信業界の料金引き下げ問題、サウジ問題など、枚挙に暇がない。このような、「弱り目に祟り目」状況について、私は、偶然ではなく必然だと感じている。好景気の時には、多くの会社が自助努力なしで業績が向上するので、企業内部で様々なタガが緩みがちになる。それが、経済の悪化により、潮の引いた浜辺のごとく浮き彫りになる。逆に言えば、上記の好業績銘柄は、有能な経営者が完成度の高いビジネスモデルを確立しているのみならず、常に引き締まった経営が行われているために社員が緊張感を持って任務に当たっているが故に、向かい風の環境下でも業績が大きく崩れないのであろう。ここからのインプリケーションは、企業は、経営者以上の存在にはなれないし、社員の努力抜きにサステイナブルな存在にはなれないということであろう。現在の株主至上主義の流れは、そのような重要な要素を無視ないしは軽視して、株主がその地位でふんぞり返っているような構図に見える。疑問を通り越して、滑稽にさえ思える。

大木 将充