大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


逆イールドと極端な相場の動き
【No.0041】
2018.12.13
12月3日に、米国債券市場において、2年債の利回りが5年債の利回りを逆転し、逆イールドの状況になった。過去の株式市場暴落に際しては、その数か月前から1年数か月前に逆イールドが生じていたことから、市場関係者は今年に入って、米国債券市場のイールドカーブに注視していた。その中で逆イールドの状況が発生し、4日の日本市場の朝を迎えた。私は、逆イールドを確認した上で、午後に出張を控えていたので、「念のため」くらいの気持ちで、午前中にやや保守的なポジションへの切り替えを実施した。前場の下げはマイルドであったが、後場に下げが加速していった。その過程で、様々な情報を通じて、この下げの背後にイールドカーブの存在があることが推察でき、市場の条件反射的な動きに軽い驚きと恐怖を覚えた。
 翌日の5日になってから、4日の世界的な株式市場の下落の主因として逆イールドが指摘されるに至って、この言葉を多くの人が普通に使っている状況に、私は以下の理由で軽い違和感を覚えた。
 金融市場は、無数の要因に左右されるため、その方向性を機械的に予想することは非常に難しい。私自身が、弊社内でAIを使ったビッグデータファンドを開発・運用していることから、そのことが一般の市場関係者以上にわかっているつもりだ。その中で、逆イールドという、無数の金融市場の情報の中の一つ、言うなれば国立競技場に落ちている1円玉くらいの要素を、世界中の何十万人にも及ぶと推測される市場関係者が一斉に注目し、世界の市場を大きく揺るがしたわけだ。これは、経験則的に、また理論的にも、相場の転換点を示す可能性があるという意味で重要な事象であることは間違いない。しかし、そうした人たちが、しかも逆イールドなんていう言葉を初めて使うような人なんかも含めて、この事象に注目したという事実は、極論を言えば、今年の前半に金融に疎い人たちがビットコイン価格の上昇を熱く語っていた状況に、似ているように思えたのだ。この逆イールドを巡る騒動については、例えば、地震雲が発生したのを見て、一斉に買い溜めに走る状況に似ていなくもないように思える。そう考えると、この反応は機械的反応かつ過剰反応の可能性があると言わざるをえないと思えるのである。
 今年に入ってからの日本の株式市場は、決算発表前の流動性の枯渇、決算発表や月次数字発表後の暴力的な株価の動き、月前半に株価が弱く月後半に戻すということの繰り返し、など、株価の単純な上下とは違う次元での異変が起こっているように見える。その中で、今回の逆イールド発生による株価急落は過度に時期尚早に思える一方で、今年の2月と10月の米国市場を中心とする株価急落は、経済の先行指標としては動きが遅すぎる感もあるなど、株式市場は首尾一貫性も失っているように思える。  そうした株式市場の動きは、経済サイクルが完全に下向きになっている中で混乱が起こっていることを示している可能性と、経済サイクルとは関係なく株式市場自体が変異しているだけである可能性の、両方を孕んでいる。いずれにしろ、今の株式市場が、数年前の市場とは異なっていることだけは間違いない。そうであれば、過去の金融ショックの頃と現在の金融市場も大きく異なっている可能性があり、そうであれば今回の逆イールドへの市場の反応も、過去と同列には捉えてはいけないようにも思える。

大木 将充


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