大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


米中冷戦に支配される今後の経済…
リーマンショック以上のショックにつながるリスクも

【No.0042】
2018.12.13
今年の春先から徐々に激化してきた米中貿易摩擦。当初は、いずれ緩和するとの楽観的な見方が支配していたが、現実に関税が課され、関税賦課対象項目も拡大していく中、市場関係者も、これはただごとではないと思い始め、現実に9月頃から企業業績に影響が出始めてきた。
 現在は、この貿易摩擦が、オバマ大統領時代に起因する米中覇権争いの一環との見方が定着しており、私もそのような基本認識でいる。そうであれば、この貿易摩擦はおそらく数年は継続すると思われる。
 貿易摩擦が企業に及ぼす影響は大きく分けて3つあると思われる。第一は、関税賦課による原材料価格高騰を通じた企業のマージン縮小、第二は、企業がコスト上昇を価格転嫁することによる最終製品価格の上昇、第三は企業が、改めて関税込みでの生産・サービスの最適地を見つける必要に迫られて工場などを移転することによるコスト。第一、第二は、短期的に生じる怖さがあるが、本当に恐ろしいのは第三のサプライチェーン最適化の動きではないかと思われる。なぜなら、これが生じるということは、本来はこんなことをやりたくない企業が、貿易摩擦長期化を認めたことを示し、それを実行することで企業の長期的固定費上昇につながるからである。
 これらの当然の帰結として、経済活動が成長も鈍化もしないという中立的経済条件の下でこれら事象が勃発したとしても、物価が上昇することになるから、数量ベースの需要が減退して、スタグフレーション的な動きが起きることになる。しかも、この物価上昇は、上記の第三の要因を前提にすると、固定費の上昇から起こることなので安易な値下げもやりづらいので需要喚起もできず、しかも、長期的に継続することになる。
 こうした環境下での投資行動は、一般論として慎重にならざるをえないであろう。我々は、リーマンショック後、10年を経て、リーマンショックとは全く性格が異なるが、場合によってはそれよりも遥かに恐ろしい局面に差し掛かったような気がする。資産運用に際して積極的運用と防衛という両方の観点を兼ね備える投資行動が必要であろう。

大木 将充


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