大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


「働き方改革」の影響が大きいのは今年より来年
【No.0050】
2019.3.11
20年以上前に銀行に勤めていた時、夜9時より早く帰宅できたことはほとんどなかった。仕事が忙しかったかと聞かれれば確かに忙しかったが、先輩方が遅くまで残っているのでどうせ早く帰れないと諦めて、のんびりと仕事をしていた感が強い。もし早く帰ることが奨励されていて、周りの人たちも残業をしていなければ、恐らく夜6時か7時には帰ることができたであろう。その2〜3時間の会社内での余計な時間が、日本人の生産性の低さの一端であったと思われる。
また、その2〜3時間を他の用途に使っていたら、自己啓発、コンサート鑑賞、飲み会、読書などへの時間の有効活用を通じて、自分の社会人としての価値はもっと上がっていたはずである。また、私のそうした追加的な消費・投資活動で、本の著者、音楽家、居酒屋などの収入も更に上がっていたはずである。そう考えると、働き方改革の効果は、想定以上に幅広く日本経済全体に及ぶことが容易に推察される。
ところで、働き方改革によりネガティブな影響を受けるのは誰か?それは、残業代が減る個人と、サービス残業にあぐらをかいてきたブラック的企業である。前者は個人だけの影響にも見えるが、実は人材派遣業界で社員一人当たりの単価減という形で現れる。また、後者については、現在の業務量維持のために必要な人材量の増加と、人員引き留めのための単位労働コスト増で、ダブルの人件費増に見舞われるリスクがある。
東証一部上場企業の10-12月期業績は、営業収益が+3%程度と鈍化し、営業利益は10%以上の減益となっている。働き方改革の影響が、企業の生産・サービスのキャパシティの伸び悩み(売上伸び悩み)や、人件費の上昇(コスト増)という形で表れていることがわかる。そして、前者と後者の業績への影響は、様々な企業への取材をした限りでは、19/3期中から徐々に出始めている模様である。それが正しいとすれば、その影響が1年を通じてフルに顕在化するのは20/3期である。働き方改革の影響を大きく受けている企業は、正念場を迎える。このダイナミックな変化は、決して軽んじることはできない。
冒頭の話に戻ると、21時より遅くまで働いていた若い頃の私は、ただダラダラと仕事をしていたわけではなかった。定時の勤務時間終了後の夕方から、英語や会計、不動産業務などを1-2時間学び、その後に何食わぬ顔をして会社に戻って仕事を再開していた。その意味で、私は不完全ではあるが、時間を自己啓発につなげていた。それがその後の職業人生に多大な恩恵をもたらした。やはり自分の身は、自分で守るしかない。

大木 将充


※ 当コーナーは、投資家の皆様への情報提供を目的としてファイブスター投信投資顧問株式会社が作成したものです。 当コーナーに掲載する記事の中には、当社設定投資信託をはじめ特定の金融商品を取り上げている場合がございますが、これらの金融商品の売買を推奨・不推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、投資家の皆さまご自身でなさるようにお願い致します。また、当コーナーの掲載内容に基づいて行った投資行為の結果については、当社は何ら責任を負いません。
※ 当コーナーの内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
※ 当コーナーの内容に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。