大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


いまだにバフェットやリンチが崇拝される遅れた運用業界
【No.0052】
2019.3.11
私がファンドマネジャーになった2010年当時、中小型株の中で、割安に放置されている優良株が数多く散見されていた。リサーチの労力を怠らなければ、アルファ収益の源泉がそこかしこに存在していたわけだ。しかし2017年頃から、急速に中小型株の割安銘柄が減ってきた感が強い。2016年のトランプ大統領就任後のトランプラリー以降、世界的に株価が上昇したため、アルファ収益を求めて多くのファンドマネジャーがそれまで以上に中小型株への投資を積極化してきたことが背景にあると思われる。つまり、たった7〜8年で、ブルーオーシャンがレッドオーシャン化し、マーケットが有意に難易度を増してきたと思われるのだ。
一方、市場関係者の中には、今でも「ウォーレン・バフェットの投資理論」だとか「テンバガーを狙うピーター・リンチ的手法」などと言って、彼らの考え方を一生懸命勉強してそれを忠実に自己の投資に反映させたり、それにとどまらず他人に彼らの考え方を教えたりする人たちが数多く存在する。確かに私も、株式関連の仕事に就く前は、彼らに関する書籍を数多く読み、そこから多くのインプリケーションを得たことは疑いない。しかし、重要なことは、彼らの考え方や手法は、彼らが全盛期の時代にはアルファ収益の源泉となるくらい有益なものであったかもしれないが、今は、それらを知っていて当たり前の時代であるということだ。つまり、これらは、アルファの源泉としては、完全に時代遅れだということだ。私は子供時代、スポーツで厳しい練習を行っているときに、水を飲むことを禁じられた世代だ(しかし、それは間違っていると子供ながらに感じ、隠れて水を飲んでいたが)。しかし、今は、運動中に水を摂取することは当たり前のことだ。バフェットやリンチの手法は、この「運動中に水を取るべき」という考え方と似ていると言ったら言い過ぎであろうか?
ましてや、今は、AI・自動運転・5G通信、IOT、遺伝子治療など、数十年前の世界と比べて、各分野では飛躍的発展が見られている。然るに、運用の世界では、上記のように過去の考え方がいまだに「威光」を放っている。私は、運用の世界の最先端で日々戦っているが、私に必要なのは、そうした古めかしい「威光」ではない。必要なのは、アルファ収益を得るために必要となる、暗闇を照らす新しい「光」だ。それを見つけるためには、AIと人間の程よい融合が必要になるであろう。「光」を追い求めたこともない輩が、AIが実用化していなかった時代の過去の「威光」を振りかざして得意がるのは、戸惑いを超えて滑稽でさえある。

大木 将充


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