大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


岐路に差し掛かるセブン&アイ・ホールディングス … 業績的にも市場評価的にも
【No.0053】
2019.4.9
セブン&アイ・ホールディングスが、株式市場において中核的銘柄であるという考え方に異論を有する市場関係者はほとんどいないであろう。  ところで、私は、ファンドマネジャーになって9年になるが、同社株を買った記憶はほとんどない。その理由は、一言で表現すれば、私の同社への評価と比べて、一貫して市場の評価が高すぎた、つまり、私の視点からは、同社株が常に割高に思えたからである。その根拠は以下の通りである。
 まず、小売事業に関し、セブンイレブンを日本市場で拡大させ、日本でナンバーワンのコンビニグループを形成するに至ったことは、十分に評価に値しよう。一方で、セブンイレブン以外の同社内小売グループ企業全体に目を向けると、同社グループ内でかつての中核業態であったイトーヨーカドーを始めとして、成長や再生を果たした実績はほとんどない。その意味で、私は、セブンイレブンの成功は、まぐれ当たりに近いと考えている。
 第二に、セブン銀行である。同行については、2000年の同行創業に関し、多くの人が反対していた中で、それを押し切って立派にやり遂げたという考え方が通説になっている。しかし、当時、銀行アナリストだった私の立場から言わせてもらうと、同行は、成功して当たり前の存在であったと考えている。そもそも、日本で一般事業者に銀行業を認めなかった最大の理由は、一般事業と銀行業務が結び付くだけで、既存の銀行に対する有意なアドバンテージができるからである。それも、日本最大のコンビニ業態が銀行業を併営すれば、かなり確実に成功するだろうということは、少しでも銀行業務を理解している人なら容易に想像できたと思う。
 第三に、フランチャイジーであるコンビニ店主に対する待遇の悪さである。そのことは、弁当等の廃棄ロスの負担をコンビニ店主に転嫁させた件で、最高裁まで争われたことでも窺われる(ロスチャージ裁判)。しかも、同社は、本裁判で、最高裁では勝訴したが、高裁では敗訴している。その中で、今回、人手不足の中で、24時間営業の限界を訴えたコンビニ店主に対し、同社は、契約書を盾に店主の請求を認めず違約金まで請求してきた。同社の社員が、毎日高いびきをかいて寝ている中で、コンビニ店主には十分な睡眠や休みさえ認めないこの冷たい対応は、ロスチャージ裁判を含めて示されてきた、この会社の限界だと感じている。
以上の3点については、小売りのアナリストの詰めの甘さも背景にして、あまり株式市場で議論されてこなかった。しかし、これからは、上記第三の点の問題の拡大を通じて、同社の真の姿が株式市場で認識されていくことになろう。その意味で、現段階ではまだ株式市場の多くの参加者が、同社の虚像を追いかけている気がする。

大木 将充


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