No.0056

日経平均株価は上値トライか。25,000円の可能性も意識。

弊社ホームページで「大木レポート」を掲載中だが、1月22日付で「今年は大幅株価上昇か?日経ヴェリタス誌の市場関係者による今年の株価予想を見て感じたこと」というレポートを書かせて頂いた。その趣旨は、例年であれば強気の株価見通しが多く見られるにもかかわらず、2019年は概ね全ての予想が18,000円から25,000円内にとどまっており、これら予想が年末の株価急落で弱気なセンチメントが支配していた時のものであることを考慮すると、往々にして実際の株価は、その上限予想値を超える可能性があるというものだ。
 この文を執筆している5月7日現在の情勢を見ると、世界的に明確に景気回復したという確証はないものの、徐々に明るい指標が見え始めている。
 例えば、中国の3月の新規人民元建て融資は1.69兆元と市場予想の1.2兆元を大幅に上回った。また、ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)がまとめた4月の独景況感指数は期待指数が3.1となって6カ月連続で改善し、市場予想の0.5を大きく上回った。プラス圏となったのは2018年3月以来で初めてである。4月の米国雇用統計で、米雇用者数は26.3万人増となり、2月に5.6万人増と減速した後に3月に18.9万人増に回復した流れを受けて、米国経済の底堅さを示している。
 以上のように、経済の落ち込みが懸念されていた中国とドイツに薄ら明りが見え、かつ、世界経済の推進役である米国経済に力強さが見られていることは、世界の株式市場にポジティブな影響を与えそうだ。
 一方で、日本株の動きは4月末までは他の主要市場に後れをとっている。その背景に、4月末からの10連休を控えた株式取引量減退と、5月中旬まで続く企業の通期決算発表での弱気ガイダンス続出リスクへの警戒があった。しかし、10連休は通過し、決算発表ももうすぐ終わる。その後は、日本株の出遅れ感と、4月末までに低減した日本株ポジションの積み増しの動きで、株価は堅調に推移するのではなかろうか。
 そこに、元号変更を通じた日本人の心理刷新がポジティブ材料として加わる可能性がある。仮に、10月に予定されている消費税引き上げが再延期となったり、それを世に問う目的での衆参同時選挙が決まったりすれば、株価の推進力は高まろう。
 以上を全て考慮すると、現株価よりたかだか10%程度上の水準にすぎない日経平均25,000円は、通過点に過ぎないということになろう。もちろん、上記の議論は、ポジティブ材料を過度に斟酌したものであり、様々なリスクファクターを十分に考慮する必要がある。6日のトランプ大統領のツイートを通じて、米中貿易摩擦のリスクが市場で再燃したことなどは、大きな懸念要因であり要注意である。しかし、重要なことは、少なくとも日本株市場では、ネガティブ要素は十分に意識されている一方で、ポジティブ要素がほとんど省みられていない状況に見えるということだ。

大木 将充