大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


チェンジ社の「残念な」ファイナンス
【No.0060】
2019.6.13
世の中には、「法的ルール」と、「常識的ルール」があると思う。株式市場における企業の規範としては、「法的ルール」を遵守すれば十分であるのかもしれないが、「法的ルール」に則った行為であっても、企業関係当事者の信頼喪失につながるケースが往々にしてある。それは、「常識的ルール」を逸脱するケースである。5月のチェンジ社のファイナンスは後者に該当するものと私は考える。
 5月15日に同社は、160万株の新株発行と45万株の既存株売り出しを発表した。前者は自己資本比率向上を狙った借入金返済を主な使途とし、後者は同社株式の流動性向上を目的としている。資金使途やファイナンスの目的自体には、両方とも十分な合理性があると思われる。
 しかし、問題点は2つある。第一に、増資と売り出しの同時実行だ。増資はEPS低下を通じた株価下落効果があり、売り出しは株式需給を短期的に悪化させるという意味で一般論として株価下落を引き起こしやすい。しかも両者の目的が別にあり、かつ、第三者的立場から言わせてもらうと、今回の売り出しの重要性や緊急度は、増資と比べると明確に劣後すると思われる。つまり、株主の立場を考えて株価下落を必要最小限に抑えようという意識が企業側に少しでもあれば、売り出しは、増資とは別個に、増資後に相応の間隔を空けて、実行すべきであったと思うのだ。
 第二に、売り出し人の問題である。本件の売り出し人は、全て、同社社長を含む同社の役職員などの利害関係者である。要は、今回の案件は、同社役員が、「私たち会社が新株を発行するので、みなさん是非買ってくださいね。でも、私たち役職員は株を売らせてもらいますけどね。」と言っているようなものなのだ。この外形を一般論として語ると、同社の役員などがお金を引こうとしている会社に対する出資依頼案件なのだ。これでは、株主を軽視しているとしか言いようがない。
 もちろん、本件が株式市場全体に与える影響は軽微であろう。しかし、こうした案件の一つ一つの蓄積が、中小型株全体の信頼性低下につながり、延いては中小型株市場の不振を招く可能性があることには、十分に留意すべきであろう。

大木 将充


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