大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


LIXILの株主総会議案で瀬戸欣哉氏側を支持しました
【No.0062】
2019.7.12
LIXILという会社については、INAXやトステムというブランド価値を捨てて、LIXILという新ブランドを立ち上げたときから、その経営に違和感を持っていた。ブランド価値向上こそが企業の成長の最短距離であると私は信じている。もちろん、企業がブランド変更して価値を向上させることは、少なからずある。しかし、それは元のブランドの価値が一向に上がらない場合に限られる。例えば、オリックスのケース。同社の旧社名はオリエント・リース。しかし、その知名度は極めて低かったが、そのことは、同社がプロ野球の阪急ブレーブスを買収した時に、新聞記者が間違ってオリエントコーポレーション(オリコ)に取材に向かったというエピソードが示しているであろう。同社は、球団買収の翌年に社名をオリックスに変え、球団名の浸透とともに、同社ブランド価値が急上昇したことは説明の必要もなかろう。
 LIXILの件に戻るが、新たなブランドをゼロから立ち上げる際には、相応の価値がある既存ブランドをいきなり切り捨てることはナンセンスである。仮に、旧ブランドを将来のどこかで切り捨てる計画を立てたとしても、当面は旧ブランドと新ブランドを両立させる形で、既存ブランド由来の収益と新ブランド由来の収益をうまくマネジメントすることが必要であると思われる。
 そうした中、CEOを実質解任された瀬戸氏が、会社側に反旗を翻し、壮絶な戦いを繰り広げてきた。私は、その戦いの過程で、瀬戸氏の活動をつぶさにチェックし、話を伺う機会も得た。それを通じて、彼の経営者としての資質と熱意を強く感じた。それが、彼を支持したいと考えるに至った一因となった。しかし、それ以上に、私は、会社側の姿勢に疑問を持ち、「一人の戦い」から短期間でここまで支持を拡大させた彼の「実践能力」に共感したのだ。これは、ベンチャー企業の経営者が、ゼロからビジネスを始めて短期間で上場を果たすのと似た構図だと思う。これは、上場企業の多くの社長がサラリーマン社長であることとの対比で、経営者を評価する有用な指標だと私は考えている。
 ところで、私が株主として権利行使を行ったということは、LIXIL株を保有していたということだが、株主総会時には保有していなかった。その理由は、LIXIL株が1000円台前半まで暴落した時に、割安感から一時的に拾ったにすぎない。一方で、今回、株主としての権利を行使した投資家の中には、株価が3000円前後まであった頃から保有を継続していたケースも少なからずあったと聞く。これに対しては、私は違和感を有する。株価がピークの半値以下まで下がったら、まずは最終投資家の損失極小化に向けて株を売るべきではなかろうか。つまり、私は、運用者として、株主としての権利行使以上に、最終運用者のためのロスカットの方が重要と考える。その優先順位が逆の運用者が、世の中には意外に多いことを感じた騒動であった。

大木 将充


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