大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


東芝の役員構成に違和感…株主還元とガバナンスに過度に傾斜
【No.0063】
2019.7.12
「会社」の定義の重要要素の中に、「営利を目的とする」ことが含まれることには異論がなかろう。端的に言えば、会社は「儲けてなんぼ」の存在なのだ。然るに、今の株式市場では、この基本原則がわからない人が嘆かわしいほど多すぎると感じている。
 この観点から東芝の経営陣を見てみよう。取締役12人のうち、社外取締役が10人。社内の2人のうち、車谷氏は銀行出身で、綱川氏のみが東芝出身者である。つまり、端的に言えば、事業内容を肌感覚で理解できている人が、ほとんど存在しない役員構成になっているのだ。別の言い方で言えば、東芝の役員は、コーポレートガバナンスと株主還元に過度に傾斜した布陣なっていると言わざるをえないのだ。しかし、ガバナンスの問題は、端的に言えば「儲ける姿勢」の問題だし、株主還元は「儲けの分配」の問題にほかならない。世界中の圧倒的大多数の企業が苦しんでいることは、そんな問題ではなく、「儲けること自体」「儲け方(ビジネスモデル)の確立」なのである。
 つまり、東芝の経営陣に、東芝という会社インフラを使って「どう儲けるか」という観点からのプロフェッショナルがほとんど存在しないのだ。
 以前のレポートで言及したことがあるが、非上場の中小企業でROEを注視している経営者は、ほとんど存在しないと思う。なぜなら、毎期損益を黒字にしたり、黒字基調を維持するためのビジネスモデルを構築したりすることに精一杯だからである。
 こう考えていくと、株式市場の関係者が偉そうに語る、コーポレートガバナンス、株主還元、ROEのような要素は、企業一般にとって必ずしも普遍的重要性を帯びるテーマではないことが窺えよう。世界に存在する圧倒的多数の企業にとっては、どうでもよい問題であり、わずかに株式を上場している会社にとって重要なテーマにすぎない。
 つまり、現在の東芝は、上場企業として重要視される側面に過度に傾斜し、上場か非上場かを問わず、広く企業一般にとって重要な要素をないがしろにしているように私には見えるのだ。そんな会社に、未来があるとは思えない。シャープやジャパンディスプレイのような道をたどることがないように祈るばかりだ。

大木 将充


※ 当コーナーは、投資家の皆様への情報提供を目的としてファイブスター投信投資顧問株式会社が作成したものです。 当コーナーに掲載する記事の中には、当社設定投資信託をはじめ特定の金融商品を取り上げている場合がございますが、これらの金融商品の売買を推奨・不推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、投資家の皆さまご自身でなさるようにお願い致します。また、当コーナーの掲載内容に基づいて行った投資行為の結果については、当社は何ら責任を負いません。
※ 当コーナーの内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
※ 当コーナーの内容に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。