大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


HISによるユニゾホールディングスへのTOBを支持します
【No.0065】
2019.8.14
アベノミクスの開始以降、不動産空室率の低下が現在まで継続しており、2015年頃から賃料上昇トレンドも追随する形で、日本の不動産市場は堅調に推移している。その中で、ユニゾホールディングスの株価は、直近ピークである2015年8月6日の6,490円との比較で、今年7月9日には1,990円まで低下していた。その間、この会社の業績自体は順調に拡大していたのに対し、株価がここまで低下した主因は、継続的に実施されてきた増資であったと思われる。2013年から2018年まで、2015年を除いて毎年のように増資が行われてきた。この企業が、日本興業銀行(現みずほFG)の系列であることは良く知られているが、私も興銀出身者である。元々は身内だったからこそ、厳しいことを申し上げるが、この会社の最近行ってきたファイナンスは、株式市場への理解不足と投資家軽視が透けて見える、大変残念なものであったと考えている。特に、2018年には、5月の決算発表でEPSを含む業績予想を出した後、1か月も経たずにファイナンスが発表された。これには、開いた口が塞がらなかった。そして、この会社には、二度と投資すべきでないと考えるに至ったのである。
 その中で、HISによるTOBの方針が示され、株価がこの7月に急騰した。この会社のみならず、不動産デベロッパーの株価は、保有不動産を時価に換算したベースでの実質自己資本に対し、株価が大幅に割安のケースが多々見られる。それは、三菱地所や三井不動産のような大手不動産会社についても当てはまる。なぜ、実質純資産ベースで割安の株価になるかと言えば、それは、多くの投資家が、不動産の含み益は「絵に描いた餅」であり、実際に利益が顕在化される事態は想定しにくいと考えているからであると推測される。
 ところで、この会社が保有する不動産は、HISの本業とシナジーがあるホテルと、直接のシナジーがないオフィスビルに分けられる。そうであれば、私は、HISに対し、この会社の支配権を握って、オフィスビルの何棟かの売却を進め、含み益を積極的に顕在化してほしいと思っている。それによって得られた売却益の大半を配当に回せば、この会社の株主にとってポジティブである。これまで長期にわたるエクイティファイナンスで迷惑をかけてきた既存株主への、せめてもの償いにもなろう。また、HISも大株主として多額の配当金を受け取って、それを事業資金に使えることになる。さらに、この動きを投資家が横目で見ることで、不動産含み益を有する多くの不動産デベロッパー会社について、不動産含み益が絵に描いた餅でないことを証明できるという意味で、株価の底上げにつながる可能性もある。一石三鳥だ。その中で、この会社は、8月6日付けでTOBに関する反対の意見表明を行った。賛成・反対は個社の自由であるが、その理由の一つとして、「公開買付価格は当社の企業価値に照らして不十分」と述べている。しかし、これまでの度々の増資で株価を下げてきたのはこの会社の所作によるもので、株価を急騰させたのはHISのTOB意思表明であったことは明らかだ。その意味で、これを反対意見として挙げるのは適切とは思えない。
 ところで、私は、上記の通り、この会社には二度と投資すまいと考えていた。しかし、今年3月末現在の株主構成を見て、HISが筆頭株主であることを確認し、配当利回りが4%以上あったことも考慮して、何か変化が起こることを期待して、この会社に対する投資を行った。その結果として、HISのTOBを通じた株価上昇を享受できた。好き嫌いの感情を超えて、客観的に投資を行うことの重要性を学んだ次第である。

大木 将充


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