No.0069

弱い中小型株と加熱するベンチャー投資…矛盾しないか?

昨年の10月と12月の株価暴落は、中小型株主導であった。目立った買いが入らない一方で、売りの勢いが強く、流動性の低い中小型株は悲惨な目に遭った。この10月と12月は、これまで好パフォーマンスを挙げてきたファンドの中でも、大幅に基準価額が下落する例が少なからず見られた。筆者も、2010年から日本株ロングショートファンドを運用しているが、2018年に暦年ベースで初めての運用成績マイナスを余儀なくされた。
 通常の環境であれば、投資時点で特定の投資対象の流動性が不十分でも、いち早く良い銘柄を見つける形になっていれば、いずれは誰かが気が付き、流動性が高まるというパターンが見られる。
 しかし、この時は、流動性が日々細る中での下落が進み、流動性の低い中小型株を多く保有するファンドほどリターンを崩したと推測される。その流れを受けてか、2019年の後半に入って、また中小型株のパフォーマンスが振るわなくなってきた。昨年の急落を見せつけられているので、多少の下落では買いが入らない。その結果、優良と目される中小型株のバリュエーションが有意に落ちている気がする。
 一方で、未上場のベンチャー企業への投資は過熱しているようだ。利益どころか、売上もほとんど計上していないような会社が億円単位のお金を普通に調達できている。もちろん、2000年前後のドットコムバブルと比べたら、今のベンチャー企業は技術的にもビジネスモデル的にも洗練されていて、投資対象となりうる会社も多いのかもしれない。
 しかし、上場している中小型株の株価が振るわない中での、現在のベンチャー投資加熱は、やや合理性を欠いているように思われる。
  計算したことはないが、現状では、上場中小型株と未上場ベンチャーを比べた場合の投資効率は、前者が優位に上回っているのではないかと思われる。そうであれば、売上利益の成長が確認でき、情報も四半期ベースで開示され、流動性も相応にある上場株投資の方に、より積極的に目を向けるべき局面にあるのかもしれない。
 上場中小型株の流動性が低いとは言っても、まがりなりにも何らかの流動性はある。しかし上場ベンチャー株の流動性は、それよりも桁違いに低く、ゼロに近い。ゼロと1が段違いであることが、やや軽んじられていないだろうか?そう考えると、現在の中小型株市場は、あくまで未上場ベンチャー企業への投資環境との相対感ではあるが、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」風潮が過度に浸透しすぎているように思われる。

大木 将充