大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


ソフトバンクグループの光と影
【No.0075】
2019.11.15
細かい点を捨象して個人的雑感を述べると、孫社長の投資事業重視の戦略は合理性があると思う。なぜなら、あくまで一般論だが、世の中が高速で変化すればするほど、特定の事業の陳腐化が早まり、一事業当たりの生涯収益が減退するからだ。
 そのような時代においては、自力でアイデアを事業化させるよりも、他人の秀逸なアイデアに投資を行ってその事業の速度アップに力を貸し、その事業が成長していく過程で投資回収を行い、そのキャピタルゲインをまた次世代の事業に回す・・・といった形の方が、収益の極大化の近道のように思われる。
 しかも、孫社長の投資アイデアに乗りたいという人たちが引きも切らず、孫社長は他人の金も加えてレバレッジをかけた投資まで行っている。投資がうまく行った場合のリターンは極めて多くなる。しかし、このような投資事業型企業においても、以下のように、一定の守るべき基準があると思われる。
 第一に過度に有利子負債を増やさないこと。第二に分散投資。第三に投資手続きの適正化、第四に不振企業への追加投融資を行わないこと。第五に含み益は企業会計上の利益に算入しないこと(あくまで思いつく範囲で述べたにすぎず、他にもあるかもしれない)。
 私は、時間が十分にあれば、ソフトバンクグループを徹底的に分析してみたいと思っている。しかし、現実にはファンドマネジャーとして1000社以上の会社に目を配る必要があって、それだけの時間がない。しかし一つだけ言えることは、ソフトバンクグループがWeWorkへの投資で躓いて追加出資を余儀なくされたことで、孫社長の投資精度が百発百中でないことが明らかになり、これまで軽視されてきた上記の5つの基準を、世の中の投資家が意識し始めたということだ。
 考えてみれば、孫社長も人間なのだから、全てがうまくいくはずはない。しかし、重要なことは、その当たり前のことが「意識されるだけで」、株価のバリュエーションが上がらなくなるリスクがあるということだ。
 また、投資家による上記5つの基準の「意識」の局面を超えて、同社が各基準をどの程度満たしているのかということに市場の目が向かった場合に、それが同社株価にどう影響を及ぼすかも不透明要因だ。

 同社の「光」と「影」に対する、バランスのとれた見方が求められる。

大木 将充


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