大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


サブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーの罠
【No.0081】
2020.1.17
古くて新しい問題として、住宅は買った方がいいか借りた方がいいかという問題がある。
これについては、一般論として一律の回答をすることは適切ではない。買う(借りる)不動産の場所と、買うタイミングによって、買う不動産の種類(マンションか戸建てか)で結論が大きく異なるからである。ただし、東京都心の優良立地のマンションに限って言えば、90年代後半以降は、買った方が借りるよりも一貫して得という結論になったと考えられる。なぜなら、今が最高値圏にあり、経年劣化も限られるため、ゼロコストに近い形になっているからだ。
ところで、最近は、世界的にサブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーが急速に浸透し、モノの所有権を100%持つという方向から、他人と共有したり、(所有権を持つ代わりに)毎月一定額を拠出して使用に伴う便益だけを得たりするという方向性が強まっていると思われる。これについては、基本的に正しい方向性であると考えられる。家の中には、買った後にろくに使われずにいる商品があふれかえっている。その代表格は自動車であろう。毎日のように通勤通学に使われるケースを除けば、自動車の稼働率は、恐らく10%にも満たないであろう。その一方で、毎年大きく経年劣化していく。それ以外でも、ベビー用品のように、そもそもの宿命として、一定期間しか使われないモノもあり、そのようなものを買うことの経済合理性は相対的に小さいと言わざるをえない。
しかし、詳細は別の機会に述べたいと思うが、この新しい流れは、必ずしも常に正しいとは限らないということを、強く念頭に置くべきと思われる。冒頭の都心マンションのケースについては、借りる派の人の考えはサブスクリプションモデルの考えに近いと思うが、経済的に見ると直近20年くらいは買った方が得であった。また、シェアリングエコノミーについても、地震などのリスク発生時には、需要が集中し、使えなくなる可能性が高い。つまり、生きている中で、最高度にそのサービスやモノが欲しいという肝心な時に使えない可能性が高いのである。つまり高度災害時のリスクヘッジとして、ある程度のモノを所有することで、明確なリスクヘッジ機能を得られるのである。
最後にもう一つだけ。これほど、供給側がサブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーを提供していることの理由を考えた方がいい。裏返して言えば、そこに供給者の超過利潤があると考えられる。プライシングが過度に供給者に有利な条件となっている可能性が高いのだ。世の中には、サブスクリプションモデルやシェアリングエコノミーを使いこなすことを最先端と見て、誇らしげに自身の行動を顕示する人がいる。しかし、私から見れば、そういう人は、往々にして、そうした機能を使いこなしているとの満足を得る対価として、経済的には供給者側にぼったくられているのである。

大木 将充


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