大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


新型コロナウィルス問題で浮き彫りになる人間の想像力の限界
【No.0087】
2020.3.11
新型コロナウィルスについては、
A これが未知のウィルスであるという点、
A過去数十年の間、金融市場が深刻なエピデミック・パンデミックリスクに晒されたことがない点、
この2つを考える必要がある。
その中で、同ウィルスについては、私も含めた市場関係者の多くが、2月初旬の段階で、ロジックの起点と展開の両面で間違っていた部分があったように思う。それは、上記@の点で、2000年以降のSARSやエボラ出血熱のケースと同視した上で、Aの未経験さから、状況を相対的に軽く見ていた点だ。
まず、SARSなどと同視したことから、感染者数推移を示す「感染者曲線」という図に思考が支配され、過去の例からしたら3月前半に世界の感染者数はピークアウトすると見られていたように思う。私も「そんなものかな」と軽く受け止めていたが、3月1週目を終えた現在、同ウィルス収束の兆候は見えていないどころか、感染は拡大しているように思う。
次に、「感染者曲線」を前提にした上で、3月中に感染者数の増加ペースが収まってくれば、経済は急速に回復に向かうとの考えも多く見られた。このロジック展開は、「感染者曲線」が想定通りであれば、適切であったと評価される。なぜなら、現在の状況を見ると、震災や水害などの天災と比較すれば、設備が痛んでいないのですぐにでも稼働が可能であるし、リーマンショックとの比較でも、需要が大きく減退していないからである。しかし、「感染者曲線」という最も重要な基本前提が想定を外れたことで、それ以外の要素が正しくても、全体の論理展開が意味をなさなくなった。
このように、人間の思考というものが、未知の事象に対しては脆弱であることが、今回の件を通じて改めて明白になった。私自身も、これからは、自身の思考力をもっと過小評価して、わからない要素があるときは無理に勝負しないことに徹するようにしたいと反省している次第だ。
ところで、リフレ派経済学者の皆さん、2%インフレ目標なんて金融緩和で簡単に達成できると豪語していましたよね。結果的に同目標を達成できないどころか、そこで日本国の金融資源を使い果たし、今回の新型コロナウィルスのように誰が見ても政策が必要な肝心な時に、弾切れになっていますよね。それに対し、コメントはないのですか?

大木 将充


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