大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


ベータリターンの重要性
【No.0100】
2020.7.10
私がファンドマネージャーという職業に就いてから、この7月で10年が経過した。ここまで続けることができたのも、会社の同僚、販売会社、投資家の皆様に支えられてのことであり、この場をお借りして、心より感謝を申し上げたい。この10年は、小さな努力の積み重ねで、多くの失敗を克服してきたが、それらの失敗の中には、後から考えれば、失敗した時点で良く考えていれば相場の方向性を読めた可能性があるものも少なからずあった。
しかし、最近は様相が異なっているように思える。日経平均株価やTOPIXの動きが、その動いている時点で何によって動いているかという原因が不明で後から考えてもよくわからないという事象が増えているのだ。その背景には以下のような事象があると思われる。

@ パッシブ化の進展によるインデックスやETFのトレードの増加
A AI(人工知能)による機械的取引の増加
B 年金の巨大化により、そのポジション調整が市場に与える影響の拡大
C トレンドフォロー戦略を採用するファンドの増加
D レバレッジを効かせたファンドの台頭

以上を勘案すると、それらを運用する主体は、必ずしも経済の大きな変化につながらない場合でも、過去の相関関係を材料に、特定のヘッドラインやニュース、自己のファンドの都合などを材料にポジションを動かすので、その総合としての株価指数の動きの理由や意味が掴みづらくなっているのだと思う。もっと言えば、株価が、本源価値とは無関係に、需給で決まる要素が強まっているのではないかと思われる。このような場合に、良く言われるのは、相場全体なんて読めないのだから、ベータリターンは犠牲にしても、アルファ獲得に特化すべきという意見だ。一見、もっともに思われるが、最近の相場では、1年間に何回かある株価の大きな変動、特に上昇気流に、うまく対処しないと、リターンを大きく損なうケースが頻発するのだ。今年3月の大幅な株価下落の後、もし4月末まで弱気ポジションを取り続けていたら、1年を通じて相対的にも絶対的にも勝つことは極めて困難になっていたはずだ。つまり、どんな環境においても、ベータリターンにつながる相場予測の重要性は高いと思われる。しかし、その予測が困難になってきている。
少なくとも、私が運用するファンドに関して言えば、弊社においては、社内会議で私の相場見通しを明確に示すと共に、それが正しかったか否かの検証をできる限り行うことにしている。そして、相場見通しを立てることは困難化しているが、だからこそ、相場見通しに向けた努力をこれからも続けていきたい。ミクロの個別株でアルファを取ることが、徐々にレッドオーシャン化している中で、相場見通しを的確に行える場合にはベータリターンの部分をブルーオーシャン化できるかもしれない。

大木 将充


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