大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


コロナウィルス問題で「回復力」と「回復の早さ」の点で東京が地方を圧倒すると考える理由
【No.0106】
2020.9.11
コロナウィルス問題の深刻化で、東京の感染者数が突出した3月〜5月や、6月〜8月の状況下において、地方から東京への「逆差別」とも言うべき事態が相次いだ。東京からの帰省者に対する自治体からの露骨な嫌悪感、東京ナンバーの自動車へのいたずら、一部外食での東京から来た客の拒絶など、枚挙に暇がない。
私が特に気になったのは、個人名を出すのは伏せるが、自己の都道府県の感染者数抑制に拘泥するあまり、東京からの人の流れを敵視するような発言が知事クラスの人たちから出てきたことだ。余談になるが、こうした「一人のコロナウィルス陽性者も嫌う」知事のスタンスは、「一件も貸倒れを出したくない」銀行の昔の消費者金融事業に似ていると私は考えている。銀行は、基本的に貸倒れを出すことを過度に嫌うあまり、返済余力の高い人にのみ融資を行い、多大な機会損失を招いてきた。その裏側で、消費者金融業者が、2〜3%の貸倒れを許容するビジネスを展開して、小口資金を必要とする多くの人に多大な貢献をしてきたことは説明の必要もない歴史的事実であろう。これと同様に、上記のような知事を要する自治体は、一見すると知事の存在や発言が頼もしく思えるかもしれないが、究極的には、各自治体への旅行者を含む流入者の不必要な減少を招き、各地域の経済を損なう事態を招く可能性がある。「不要不急の外出を控えるように」と念仏のように唱える知事が少なからずいるが、こうした人たちは「外出が基本的には不要不急のものである」ことを忘れているように思える。
そのような中、コロナウィルス問題の実像が日に日に明らかになりつつあり、コロナウィルスに感染した後に重症化する人のパターンも見えてきた。お叱りを承知で、象徴的に申し上げると、「若い人でも糖尿病などの持病を持つ人」と、「持病を持つか否かにかかわらず60歳を超えて抵抗力が衰えた老人」の重症化率は高くなるということが見えてきたように思う。逆に言えば、「40代以下で持病を持たない人」という、実質的に世の中を動かす原動力となる層、今後の日本を担う層、日本人の中の圧倒的多数の層の人たちについては、感染後に重症化するリスクは無視できるほど小さいと考えるのが自然だと思えるということだ。そうであれば、日本人の行動として適切なことは、40代以下の健康な人は、仕事も遊びもガンガン行い、ただ、持病を持つ人や高齢者への配慮を十分に行えば良いということになる。そして、厳しい言い方になるが、老人や持病を有する人たちが、より行動に注意すべきということになる(これは、私が高齢者に片足を突っ込んでいるから言えることではあるが)。
現に、東京では、少しずつではあるが、変化が見られる。六本木の夜の人出は徐々に増加しているように見えるし、外食産業で賑わう恵比寿のランチ時間の飲食店の賑わいや、深夜10時以降の人出は、コロナウィルス問題前に近い水準に戻っているように見える。そして、上記のことを踏まえて繰り返して申し上げるが、こうした人の流れの戻りは、コロナウィルス問題に直面する現在でも、適切な行動であると私は考える。一方で、地方の人々は、東京の人の来訪や、日々の外出について、東京都との比較では、まだ消極的に思える。このような状態が続けば、東京が経済的にいち早く活況を取り戻すのに対し、地方は不必要な外出抑制や都会からの来訪者拒絶で、回復が遅れる。回復が遅れれば、店の閉店が加速して、その結果として不便な街が随所に形成されることになる。町が日々不便になる状況を、コロナウィルスのリスクを過大評価する住民自身が醸成していることに早く気付かないと、地方の町は大変なことになる。
リモートワークで地方や郊外が注目を浴びているが、その効果は軽井沢や湘南のようなネームバリューのある限られた地域に止まり、圧倒的多数の地方の町は衰退することになる。やはりこれからも、東京や大阪のような都会が、日本の中心となる状況は変わらないと考える所以である。

大木 将充


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