大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


大手化粧品会社の落日の可能性
【No.0109】
2020.10.12
男性である私には、永遠にわからないと思われるのが、女性の化粧品マーケットである。一言で申し上げれば、女性が、どんな効果があるかが不明確なものを、なぜあれほど高い価格で買うのか、新商品が出るたびになぜ飛びつくのか、が理解不能なのだ。
その質問をあるアナリストに聞いたところ、かなり端折って申し上げると、化粧品は高いから売れるのだ、女性は夢を買っているのだ、成分が似ていても大手化粧品の高いブランド商品が消費者は好きなのだ、という回答だったと私は理解した。まあそんなものかな、と思いつつも、スーパーマーケットでは1円でも安い食品や生活用品を血眼になって探す人が多いのに、矛盾しているなとも感じた。
話は飛ぶが、かつて最も粗利益率が高い商品は眼鏡だと言われてきた中で、消費者目線で開発をおこなってきたJINS(ジンズ)が、明朗会計で安価の眼鏡を提供したことで、眼鏡業界で超過リターンを貪ってきた眼鏡会社の優勝劣敗が明確になってきた。正確にはわからないが、眼鏡と同等かそれ以上の粗利益率を誇る商品が化粧品ではないかと私は疑っている。
それが正しければ、JINS(ジンズ)のような会社が化粧品業界に出てきたら、大手化粧品会社は、シェアも粗利益率も食われる形で業績が弱くなっていくのではないか、インバウンド需要は化粧品業界に最後に咲いた徒花ではないか、という仮説もあながち間違いではないように感じた。
その中で、最近、I−ne(アイエヌイー)やプレミアムアンチエイジングといった新興企業が、上場を果たしたり目指したりする動きが出てきた。前者はAI(人工知能)活用による「Beauty tech Company」と自社を位置づけ、後者はスキンケアや美容に特化する形で、共に業容を拡大している。両社は、差別化要因を有する商品を通じて大手化粧品会社の牙城の一角を崩しつつ、チャネル戦略でも大手化粧品会社の重いリアルチャネルに対する優位性確立を志向している。
これにより、大手化粧品会社の根幹が崩れるとは考えにくい。しかし、つい1-2年前までは、インバウンドの急伸で我が世の春を謳歌し、その栄華がしばらくは続くと思われていた大手化粧品会社でさえ、どうやら新興企業の攻勢を受けている事態がおぼろげながら見え始めてきた。
菅首相が、携帯電話料金引き下げに本気で取り掛かり、携帯電話業界もどうやら曲がり角を迎えつつあるが、大手化粧品会社は、菅首相のお気持ちのいかんにかかわらず、曲がり角を迎えたように思われる。商品性に鑑みて分不相応な超過リターンを得ている業界ほど、業界の大変化での落日スピードが速いことには、十分注意すべきだと考える。

大木 将充


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