大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


真に強い株相場は「円高」で起こる…単純に円高を恐れ、円安を喜ぶ「馬と鹿」の存在を嘆く
【No.0114】
2020.12.11
私は、常日頃から、金融市場関係者は「思考停止を伴った円高恐怖症」に囚われていると一貫して感じている。これについては、日本では輸出主導型の企業が多いため、円安で業績が良くなるが、円高で業績が悪くなるということが主因であろう。
しかし、これは、まず「感覚的に」おかしいと感じるのだ。というのも、例えば、極端に言えば、自国の通貨が高すぎて国が破綻する事例など歴史上あるのかを考えてみればわかる。自国の通貨が高ければ、世界中のモノを相対的に安い価格で買える。このことの何が問題なのであろうか。
「理論的に」考えてみても、おかしい部分がある。第一に、確かにフロー収益的には、円高で輸出企業の輸出品の競争力が失われて、企業業績が低下するが、こうした為替の問題は地産地消を進めることである程度解決が可能だ。現に、日本企業の業績の外貨感応度は、年々低下していると思われる。第二に、フローではなくストックに着目すると、違う姿が見えてくる。特に、日本では個人の金融資産が1800兆円を超え、この価値をいかに高めるかが国家的課題と言える。個人金融資産の大半が円ベースであることから、この点からは、円高が良いに決まっているのだ。つまり円高恐怖論者は、このストック部分を軽視しているように見えるのだ。逆に、中国を含む最近大幅な成長を果たしてきた輸出産業主導の新興国は、民間のストックが十分に蓄積されていないが、こうした国では過度の自国通貨高は自国の輸出競争力を削ぐリスクがある。しかし、こうした例と、ストックが大きい日本を同視すると、答えを間違うリスクが生じる。
ところで、今年11月からの株価上昇局面では、為替をものともせず、どちらかと言えば円高気味の状況下で起こっている。これをリスク視するのは勝手だか、日本の株式市場の取引の半分以上を外国人が占めていることから見つめ直してみたらどうだろう。特に、米国の投資家から見ると、日本株に投資した後に、円高で日本株が上昇すると、円建ての株高効果と、円高によるドルベースの為替差益をダブルで受けられることになる。これが、本当の意味での「世界的・本格的リスクオン」であろう。これまでのドル高円安のリスクオンは、私に言わせれば「局所的・一時的リスクオン」にすぎないように思われる。いずれにしても、私は、日本人に対し、円高のメリットをもう一度見つめ直して欲しいと願っている。
私は、3社の外資系企業を渡り歩いてきたが、どこに行っても上司に「安い買い物をした」と言われてきた。それは名誉なことだが、裏を返せば、私はもっと会社に金銭アップを要求できた「お人よし=馬鹿者」だったということになる。
一方、アベノミクスによる円安でインバウンドが急増したが、その裏で外国人の多くはこんな風に思っていないか。「日本人は、こんなに美味しいものをこんなに安く提供して、馬鹿なんじゃないか?」
円高を恐れる馬鹿、外資系企業に格安の賃金で働かされる馬鹿、円安で外国人に過度に安い価格でモノ・サービスを提供して喜んでいる馬鹿…米津玄師さんのヒット曲を大声で歌いたくなるのは私だけか?

大木 将充


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