大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


世界的に投資対象の選別色が強まる中、日本株の強い展開が予想される
【No.0119】
2021.2.10
最近の米国株における、「個人投資家VSヘッジファンド」の構図は、個人の「時間」と「お金」に余裕が出てきたことの縮図と理解できる。その状況に「SNSの威力」が合わさった結果としての「個人のお金」の威力を、今さらながら多くの人が実感したであろう。
これにより、ヘッジファンドのロングショート戦略が傷を負い、ショートサイドの手仕舞いと、ロングサイドのポジション縮小が同時発生的に起きたことで、金融市場のボラティリティが高まり、株式市場全体が下げの方向に向かった。この動きが、機関投資家の好む銘柄の下げと、機関投資家に不人気の銘柄の上げを内包する形で生じたため、この1月は、少なからずのヘッジファンドが致命的なダメージを負った模様である。ちなみに、弊社でもいくつかのロングショート戦略のファンドを運用しているが、どれも何とか大した傷を負わずに逃げ切った形になり、ファンドによっては有意なプラスリターンを確保できたものもあった。
このような事象の発生で、米国大統領選以降、好調に継続してきた各種資産価格の上昇が世界的に止まる懸念が生じている。しかし、私は、必ずしもその意見に賛成しない。もちろん、昨年後半以降の世界的リスクオンで、コモディティや仮想通貨を含む多くのアセットクラスの価格が上昇してきたが、そのような「なんでもかんでも上がる」状況は終わった可能性は十分にある。そして、今後は、投資対象の選別色が強まる中で、選ばれるに至った投資対象については、これまでと同様に力強く上昇する可能性が高いと見ている。
その理由の一つは、今回の「個人投資家VSヘッジファンド」の構図からも見て取れる。個人投資家からのこれほどの凄まじい米株市場への資金流入自体が、金余りの世の中を象徴的に示している。そして、有り余ったお金が、これまでは資産価格の上昇とボラティリティの低下という「リスクオン」状況を形成してきたが、それが今回は、ヘッジファンドの空売り対象銘柄に向かって、米国市場の不安定性を招いたにすぎない。つまり、今回は、米国の個人投資家のお金が「たまたま」ヘッジファンドの空売り銘柄に向かい、それが「結果的に」短期リスクオフの状況を形成しただけであり、金余りの状況には何ら変わりはないのだ。
加えて、最近のFOMC(連邦公開市場委員会)の結果を見ても、これだけ世界的に資産価格が高騰しても、金融緩和の方向に何の変化もない。そして少なくとも1年くらいは変化がないと予想できる。その理由は、「コロナによる経済ファンダメンタルの停滞」があるからだ。つまり、現在は、資産価格が高騰していてそれだけ見るとバブルのように見えなくもない一方で、実体経済は弱いという形で、資産価格と実体経済に大きな乖離が生じている。そして、金融政策は、当然のことながら実体経済の弱さに着目した形で行われるから、コロナによる停滞から経済が目に見えて戻ってきたと確認できるまでは緩和的金融政策が続くであろう。そして、しつこいコロナウィルスの実態を見る限り、経済が目に見えて戻るまでには、少なくとも1年くらいはかかるであろう。それまでは金融政策の変更の可能性は極めて小さいと考えられるのだ。
それでは、これから上がる資産は何か?私は、それが今年は、「日本株」になると考えている。理由は色々とあるが、主な理由は、第一にこれまでの資産価格高騰の要因となったドル安が一服しても株価にデメリットにならないこと(むしろ円ベースの業績的にはポジティブ要因)、第二に「今年は製造業の年」になると思われ、「製造業=モノづくり」に強い会社が揃っているという意味での世界最強株式市場は「日本株」だからである。では、なぜ製造業が重要かと言えば、それは、「環境問題」が喫緊の課題になっているからである。CO2削減を背景にした水素社会の実現、新電源の確保、電力の有効活用などは、基本的には全て製造業の関与が必須になる。
その意味では、私は、Windows95の登場から世界的株式市場で25年以上続いてきたソフトウェア全盛の流れが、今年からハードウェア重視に大きく変わる可能性があると考える。そして、日本の伝統的製造業の株価は、最近まで上昇してきた半導体株やGAFAM株(Google(グーグル)Amazon(アマゾン)Facebook(フェイスブック)Apple(アップル)Microsoft(マイクロソフト)、DX(デジタルトランスフォーメーション=企業のデジタル化に対応するための一連の取り組み)を背景にしたソフトウェア株などと比べるとまだ十分に上がっていない。このように、かつて日本を代表していた重厚長大企業の株価があまり上昇していない現状を見ると、日本株全体としては、株価上昇の余地がまだ十分に残されていると考えられるのだ。

大木 将充


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