大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


急騰したビットコインが価格水準を維持したまま日常に浸透する可能性
【No.0121】
2021.2.10
日経ヴェリタス誌1月31日号の「ビットコイン価格乱高下」の記事は、大変興味深いものだった。そこで、述べられていたポイントは以下の4点である。
第一に決済可能な範囲が拡大していること、第二にビットコインが個人のみならず金融機関や年金の投資対象になってきたこと、第三に世界の金融当局が警戒を強めていること、第四に識者の間でもビットコインの本質に対する見方が分かれていること。
通貨の本質を、「価値の交換手段」「価値の尺度」「価値の保存」の3点から見ると、上記の第一の点は、「価値の交換手段」としての側面が強化されたことを意味しよう。ビットコインは価格変動が激しいので、「価値の保存」という機能を有するか否か議論があるようだが、第二の点を考えると、投資対象としての地位を徐々に固めているとすれば、それは「価値の尺度」と「価値の保存」の観点が強化されているとも解釈できる。
第三の点について、金融当局が神経を尖らせる事情も理解はできるし、国家による投資家保護という視点から新興の投資対象を見つめることは極めて重要である。しかし、発行総量が決まっているビットコインは、だからこそ「価値の保存」の点で不安定性を孕む主因になっているとしても、無尽蔵に発行量が増えている各国の通貨に対して、アンチテーゼ的な意味合いを有していると思う。つまり、誤解を恐れず端折って申し上げると、故意に通貨発行量を増やし続けて通貨価値を意図的に切り下げ続けている各国の金融当局が、発行総量が決まっているビットコインに規制をかける構図には、何か釈然としない感を否めないのだ。投資家保護というよりは、強力なライバル出現という感情論や、自国通貨の価値保存性への不安から、国家がビットコインに対する警戒感を高めているという事情はないか、のチェックが投資家には必要に思われる。
第四の識者の見方が分かれている点は、結局のところ、世界の頭脳を結集しても、ビットコインの価値に対する評価が定まらないという点が重要だ。頭で考えると、色々な考え方が出てくるのだ。しかし、価値が出るかどうかは、識者の頭の中で決まるものではない。一般の人々が使うようになるか否かで決まるのであろう。その点は、インスタグラムやTikTokがプラットフォーム化する過程に似ている。仮にそうであれば、2017年頃のビットコイン急騰の頃と比べると、現在のビットコインは、通貨としての性質が完璧か否かはさておき、通貨としての「体裁」はより濃くなり、人々の通貨としての「認識」も強まっているように思う。
考えてみれば、我々は、「数字が刷られているだけの紙」である通貨を欲しいばかりに、大切な「時間」という資源を労働に使い、悪い人たちは刑事罰が下されることを承知で詐欺や泥棒に手を染めたりしている。そして、そのような「紙」を刷った通貨当局には発行益がもたらされる。そして、その「紙」は、金融緩和を大義名分にして無尽蔵に刷られ続けている。一方で、繰り返しになるが、ビットコインの発行総量は一定であり、次第に多くの人が保有したり投資したりしつつある。さて、どちらの方が、価値があるのか?さらに言えば、今後は、ビットコインを警戒している先進国の住民ではなく、通貨信用力の弱い先進国以外の国の住民が、ビットコインに「価値」を求めて、潜在ユーザーの多くを占める可能性があるのだ。
こんなふうに考えると、私には、ビットコインの価値が、再度急落するイメージを持てない。ユーザーが増え続ける限りは、上昇が続くのではないか?少なくとも、通貨当局が共同で妨害するまでは。

大木 将充


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