大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


アナリストランキング雑感…2割5分の首位打者、日系証券の強さの背景、エコノミスト部門の復活を願う
【No.0122】
2021.3.10
2月28日の日経ヴェリタス紙で、「第33回人気アナリスト調査」(アナリストランキング)が発表された。高順位を獲得した皆さん、おめでとうございます。不本意な順位になった皆さん、気を落とさず頑張って下さい。私は、2009年まで評価対象のアナリストであり、2010年からは逆にアナリストを評価する側になったという形で、内と外からこのランキングを20年以上見つめてきた、その視点から、今回のアナリストランキングについて気付いたことを簡単にまとめてみたい。
@ トップアナリストに「文句ない実力者」と「2割5分の首位打者」が併存
総合ランキング1位の村木さん(SMBC日興証券)、家電・AV機器1位の中根さん(みずほ証券)、電子部品1位の佐渡さん(大和証券)、REIT1位の鳥井さん(SMBC日興証券)」など、常連のトップアナリストの人は、基本的に優秀な方が多い。銀行の松野さん(みずほ証券)、ビジネスソリューションの上野さん(大和証券)のような実力者が1位に上がったことも十分に理解できる。また、小売りの小場さん(三菱UFJモルガンスタンレー証券)、高橋さん(みずほ証券)、自動車の箱守さん(大和証券)、桾本さん(野村證券)のように、どちらが1位になっても不思議ではないハイレベルのセクターもあった。一方で、2−3年前から、1位の称号を授けるには役不足に思える例も散見されるようになっている。その背景には、肝心な銘柄の株価を当てられない、IR担当者の説明を鵜呑みにしたレポートしか書けない、といった「根本的な技術不足」があるように感じる。これを私は「2割5分の首位打者」と呼んでいるが、決して喜べるような状況にはないと思う。各証券会社の補強ポイントもここにあると考えられる。
A 日系証券の強さの背景は「モーニングコール」かもしれない
証券会社別には、大和証券1位、みずほ証券2位、SMBC日興証券3位となっている。この3社に共通する点は、朝のアナリストモーニングコールがある点だ。これを最初に始めたのは、みずほ証券(みずほットタイムコール)だと思うが、これを構想・実施した同社担当者には、特別ボーナスを払ってもよいくらいの功績であろう。それに追随したSMBC日興証券、大和証券が高順位になっていることも偶然ではなかろう。アナリストランキングに投票する立場からすると、セクターによっては、誰に投票するか迷ったり、候補者が思い浮かばず空欄になったりすることもあるが、そのような場合に投票者の頭に思い浮かぶのは様々なアナリストの「印象」であり、モーニングコールには、その「印象」を強める効果がある。こうした施策で、投票の1位欄というよりは、2位と3位の空欄をいかに埋めるかが、証券会社の獲得ポイントを極大化するための重要な条件だと思うのである。
B アナリストランキングでの「エコノミスト部門」の復活を願う
アナリストランキングから「エコノミスト」部門が消えてしまったが、これは是正すべき点であると思う。「大木レポート」の「No.0100ベータリターンの重要性」でも書いたが、私はロングショートファンドを含むアクティブファンドは、ベータリターンを軽視し過ぎていると思う。株価全体の急騰、急落の局面があまりにも多いため、それに追いつくことがリターン確保の重要要件になっているのに、そのことが軽く見られているように感じる。そして、その相場全体の動きを読むのに有用なのが、マクロ経済分析なのである。一方で、2015年夏のチャイナショック以来、相場の急騰・急落の回数やインパクトが増加・上昇しているが、はっきり言わせてもらうと、そのような重要局面で、テクニカル分析やクオンツ分析は、あまり役にも立っていないと感じる。高田さん(野村證券)、波多野さん(SBI証券)、鈴木さん(東海東京証券)のようなファンダメンタル分析に基づくアクティブ運用にも有用な情報提供をしていると思われる一部の人たちを除くと、一般的なテクニカル分析やクオンツ分析は、分析の体をなしている風采を伴いながら、過去のデータばかりに囚われて、実は「バックミラーだけを見て運転する運転手」のようになっている気がする。どうでも良いときはスムーズに走るが、肝心な局面で甚大な事故を引き起こしがちなのである。
話はそれたが、エコノミストの中には、李さんや森山さん(共に三菱UFJモルガンスタンレー証券)のように極めて優秀な方々が存在するが、そのような人たちがランキングの陰に隠れてしまうのは「宝の持ち腐れ」だ。証券会社が共闘して日本経済新聞社に要求する形を取ってでも、「エコノミスト」部門を復活すべきだ。その代わり、「テクニカル分析」と「クオンツ」部門を一本化すればいい。どうせ、どちらも、今後の重要な相場局面で当たらない可能性が高そうなのだから。
絶対に声がかからないからこそ言えることだが、私が証券会社の調査部長になれば、現状改善に向けて、いくらでも打つ手はある。

大木 将充


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