大木レポート


筆者プロフィール
大木昌光(おおき まさみつ)
取締役運用部長兼チーフ・ポートフォリオ・マネジャー

89年日本興業銀行、95年マッキンゼー・アンド・カンパニ 、97年より大手外資系証券、投資運用会社でアナリスト、ファンドマネジャー経験を経て、14年より現職。


債券リサーチと株式リサーチの非対称性
【No.0123】
2021.3.10
「債券」も「株式」もリスク資産である。その前提では、どちらもバブル的様相を呈する可能性を孕んでいる。しかし、「株式」では頻繁に「バブル」という意見が聞かれるが、「債券」に対して「バブル」という言葉はあまり聞かない。
ここで既に、両資産に対する金融市場の見方が、出発点から整合的でない可能性が見て取れる。例えば、2020年11月からの世界的な株価上昇局面。日本でも日経平均株価が今年2月に3万円を超えたが、今後について意見は分かれている。そして、「バブル」ではないかという意見も少なからず見られている。
これについての私の意見を述べてみたい。
その論理的出発点は、債券金利である。米国10年債金利が、2019年の米中摩擦下で一旦1.5%を切り、2020年のコロナ・ショックでは1%を大きく下回る水準にまで低下した。日本や欧州の国債では、最近は恒常的にマイナス金利の状況が見られた。これらは、「債券バブル」ではないのか?
私は、各国の名目成長率やその内訳との比較で、これは「壮大な債券バブル」だと思っているが、ここに対して何らかの確定的判断を下さないと、その後に起きた株価の上昇への評価ができるはずがない。なぜなら、現在の世界的株価上昇は、債券が売られる中で起きているからだ。
その中で、2月26日の日本株は、日経平均株価が4%近い下落となり、暴落とも呼ぶべき状況を呈した。その背景は、前日の米国10年債金利の1.6%超の水準への急騰と、それに伴い金利上昇が株価を冷やすリスクが意識されたことだと言われている。しかし、上記の通り、2019年に1.5%弱まで下がった状況が仮にバブルであるとしたら、たかだか1.6%を超えた水準がリスクになるはずがない。私に言わせれば、この程度の金利でアタフタしている人々は、1%を切る水準に「感覚的に」慣れ過ぎて、つい1−2年前は金利が2%やそれ以上の水準にあったという「客観的事実を」忘れている「残念な人たち」にしか思えない。
なお、債券畑の人で、担当領域でない株について、大した能力も分析も知見もないくせに、株を安易に「バブル」と結論づける人が存在したら、要注意だ。存在するかどうかは知らないが、仮にそのような人がいたら、私はこう言いたい。
「コロナ問題という未曽有の危機にありながら、今は米国債の金利がイタリア国債の金利より有意に高い。そこでは、両国のデフォルトリスクの違いが正確に織り込まれているとは思えない。このようにデフォルトリスクが価格に適切に反映がなされていない状況自体が債券バブルの証左ではないのか?そうだとしたら、他分野の領域に口を出す前に、まず自分の専門分野をしっかりと調べて下さい。」

大木 将充


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