No.0017

高層マンションは、買いか?②…人体への影響との関係

メリット・デメリットをできるだけ多く集めよう!


様々な不動産の本を読むと、高層マンションに関する広範囲の情報が得られる。以前のレポートに書いた通り(「高層マンションは買いか?①」)、高層マンションで得られるメリットは確かに多い。例えば、近くに同種のマンションが建設されない限り、眺望が永遠に保証される点は、低層マンションでは容易に望み難いメリットだ。また、都市部に多くの人が住めるようになった一因が、高層マンション増による住居供給量増があることは間違いないであろう。それにより、人の集積が進み、それがまたビジネスや居住性の利便性を高める…という好循環が、今の東京の利便性を作り上げたといっても過言ではないであろう。
ただし、ここでは敢えて、高層マンションに関するマイナスポイントを指摘しておきたい。
例えば、高層マンションの壁は薄いらしい。なぜなら、構造上の問題で上層階を軽くする必要があるからだそうだ。したがって、防音性能を重視する人にはあまり適さない。
また、通勤ラッシュ時に、エレベーターがなかなか来ない点は、十分に考慮する必要がある。へたをすると、外に出るまでに数分かかることもあり、結局はドアtoドアの通勤時間が有意に長くなったりすることもある。
エレベーターの問題もあるからだろうが、子供が室内に引きこもりがちになるという点も、指摘されることがある。しかし、これは、努力で改善できる点であり、根本的ネックとは言い難い。

厚生省研究で示されている、高層階居住と流産・死産との相関…真実を知りたい!


ところで、私が最も関心を持っているのは、「高層マンションと人間の健康の問題」である。不動産関連の本を読むと、高層マンション居住による人体への影響が述べられていることが多いが、特に、本当であれば深刻であると感じるのは、「高層マンションと流産・死産との相関」である。この元ネタは、「厚生省心身障害研究」であるようだ。
これを読むと、「平成4年度」版には「高層住居に居住している妊婦では、流・早産などの異常分娩が高率に認められ…」となっており、「平成5年度」版には「高層階住宅に居住している妊婦では、流・死産が多いことが判明している。」と、はっきり書かれている。このような重大結果が、当時の中央官庁が主体となった調査報告で示されていることは、大きな驚きである。
もちろん、この調査結果がどの程度の妥当性を有するかは、筆者にはわからない。また、この当時は、「6階以上」を高層階としていることから(90年代は30階建て以上の高層マンションは極めて少なかった)、20階や30階のようなかなりの高層階での居住と流産等の関係が不明なため、一般論として高層マンションを危険視するのも問題含みと言えよう。
しかし、妊娠・出産は、女性にとって最も重要なイベントの一つであると思われるだけでなく、少子高齢化に悩む日本国民全体の関心事であろう。それについて、こうした研究が示されていながら、現在は限られた人しかこうした情報を知らないというのは、問題ではなかろうか?
なお、筆者がある不動産関連の会社の方に聞いたところによれば、その会社の社員の中で、高層マンションに住む人も多いという説明があった。それは、高層マンションを選択しようとしている人にとって、明るい材料であろう。しかし、それは注釈つきであった。2階とか3階の低層に住む人が多いとのことであった。

大木昌光