2014年7月に書いた「大木レポート」のNo.0021の「経営者を見た上での企業評価 ①外国人経営者の株は売りかもしれない」で、私は日本の企業の外国人経営者について懐疑的見方を示した。その中で、日産自動車のカルロス・ゴーンに対しても、批判的な意見を述べた。そこでは、端的に言えば、彼の報酬が彼の働きに比べると高すぎるのではないかという所見を示した。また、彼が行ったコストカット手法による企業再建は、多くの人が考えているほどの偉業ではないということもその中で明確に示させて頂いた。つまり、私は、そのレポートを書いた時から、カルロス・ゴーンという人の経営者としての能力は、可もなく不可もないくらいのレベルだと考えていたのだ。したがって、今回のカルロス・ゴーンの逮捕を見て、驚きはしたものの、何の違和感もなく、むしろ、早くこの人と日本企業との関わりをなくしてほしいと願ってさえいる。
これまでを見ても、新生銀行のティエリー・ポルテ、あおぞら銀行のブライアン・プリンス、日本板硝子のスチュアート・チェンバース、ソニーのハワード・ストリンガーなど、あくまで私が知っている限りであるが、外国人経営者の能力と実績について、私は、高い評価はできない。むしろ経営者として不合格であると考えてきた。わずかに、日本マクドナルドでサラ・カサノバ氏がトップに就任してから、彼女の経営手腕との因果関係は不明ながらも、同社は復活を果たし、業績も好調を維持していることから、例外的に敬意を有している。
その中で、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー氏は、シャイアー社の買収を実現した。これについては、ポテンシャルとリスクの両面を抱えており、まだ予断を許さない。しかし、一つだけ確実なことがある。それは身の丈に合わない有利子負債を抱えたことで、武田という会社が、創業以来最大のデフォルトリスクを抱えたことだ。このウェバーという人が、武田という会社を鮮やかに立て直せるか、会社存続の危機に陥らせるかは大いに注目されるが、この人が、これだけの賭けに出て途中で逃げ出さないかどうかに、みなさん是非着目して頂きたい。そして、この人が逃げ出したり、武田を凋落させるようなことがあれば、日本人は、外国人経営者にこれ以上期待することはやめるべきであるように思う。
大木 将充