No.0046

昨年12月の株価暴落で見えたAIの強み

前述の通り、昨年12月の株価暴落で、当ファンドの「マクロデータ分析に基づくシステム」が興味深い機能を発揮した。具体的には、21日に日経平均株価が一時20,006円まで低下したときのこと。私は日経平均株価で19,000円程度までの下落リスクは認識していたが、それが12月中に起きることは想定しておらず、20,000円近辺までの下げでさすがに下げすぎと考え、現状以上のポジション縮小は考えていなかった。その中で、「マクロデータ分析に基づくシステム」は、更なる空売りが有効とのデータを示していた。これは人間たる私のファンドマネジャーとしての考えと異なっていたが、私は同システムのアウトプットに添って空売りを増やした。というのも、このような金融市場の方向性の予測に際して、人間の感覚とAIの判断が異なったときに後者を重視することが当ファンドの趣旨であるからだ。その後の推移として、3連休後の25日に株価がさらに約5%下落したことは説明の必要もないであろう。
ちなみに、ファンドマネジャーとして一番辛い局面は、自分が確信や自信を持って保有に踏み切った銘柄が、株価全体の下落局面の波に飲まれて下げ止まらないことだ。そうしたケースでは、しばらくは我慢するものの、それが続くときにはポジション切りを迫られることがある。そして、もう我慢の限界という思いで株を売るタイミングが不思議と株価の短期的ボトムになり、その1-2日後に株価が反転することは少なくない。こうしたことが起きる理由として、私は、株価の下落サイクルの長さが、人間の忍耐の限界よりほんの少し長いのではないかという仮説を従来から有していた。そう考えると、AIを活用することで、現在と似たような局面を見つけてきて、人間では耐えられないような下落局面の中途で平然と株を売ることは、十分に可能なように思われる。今回の下落局面では、このようなAIの強みが発揮できたのではないかと思っている。
昨年10月頃から年末にかけて、明確な株価下落基調に入り、「ソーシャルデータに基づくシステム」が中小型株の不振で十分に機能しなかった点を、私は深刻に捉えていた。しかし、それを「マクロデータ分析に基づくシステム」がカバーしたことを認識して、私はAIのポテンシャルに関する希望を維持できた。
ちなみに、株価下落の最終局面であった25日以降に、当ファンドは「マクロデータ分析に基づくシステム」に添って、空売りを減らし現物買いを徐々に増やすこともできている。これは通常のテクニカル分析ではできないと思われる。なぜなら、単純なテクニカル分析によれば、12月のもっと早い段階で割安サインが点灯しているからだ。これに基づいて投資行動を起こしていたら、下落局面で何も動かなかった場合と比較しても、傷は格段に深いものになっていたはずだ。

大木 将充