東証REIT指数が好調に推移している。世界的に株式市場が厳しい展開となった2018年も+6.7%、2019年1月も+4.3%の上昇率となった。
この背景には、オフィス市場の歴史的に低い空室率と、それを反映した賃料上昇がある。2018年12月の都心5区空室率は1.88%と過去最低水準を更新しており、平均募集賃料は前年同月比+8.9%で前月比でも60ヶ月連続で上昇している。世界的に見ても、ニューヨークやロンドンのオフィス賃料上昇率が前年同月比で概ね横ばいであることとの比較でも、堅調と考えられる。
通信手段の急速な発展とは整合性が取れない状況にも見えるが、景気が概ね堅調に推移していること、働き方の多様化が進んでも結局は社員数相当分の座席が必要であることなどが背景にあると考えられる。ただ、それにも増して現代的特徴と思われる点は、人手不足対策の結果としての側面が強いと思われることだ。今や、汚いオフィスや、狭いオフィス、福利厚生の弱さを窺わせるオフィスを見せただけで、若い人がその会社に寄り付かなくなるのが現状なのであろう。したがって、一人当たりオフィススペースはできるだけ広く、共有スペースも豪華に、本社ビルは一等地の最先端ビルで、といった要素が、人集めの有効な手段(人を逃がさないための施策)になっていると推測される。
一方、住宅賃料も、東京都内ではじわじわと上がり続けている。東京都心のオフィス賃料上昇は、景気の反映と考えれば違和感はないが、マンション賃料の上昇については、住宅ストックの余剰が日本全体で1000万件とも言われている中、個人的には意外感が強かったし、何人かのREIT関係者と話をしても同様の感想が述べられる機会が多かった。
この背景にも、人手不足があると推測される。企業が、採用の手段として住宅手当をかなり思い切って引き上げているようだ。中には、15万円前後まで負担する会社もあるようで、その場合には、数万円だけ自己負担すれば、都心のそこそこの広さのマンションに住むことも可能だ。
つまり、オフィスもマンションのいずれについても、空室率低下と賃料上昇の背景に人手不足があるように考えられる。
2025年には、東京でも世帯数が減少に向かうと予想される中、今後の不動産市況は、人手不足の程度と持続性にかかっている部分が大きいことになる。その意味では、当分は安心してみていられるかもしれないが、いったん景気が悪くなると、現在の不動産市況が、個人を企業が甘やかせていることにより形成されていることを考えると、それまでの景気悪化局面と比べてもダメージは大きくなるかもしれない。
大木 将充