昨年12月25日に、日経平均株価が約5%下落して20,000円を割れ、翌26日は一時19,000円を切った。私にとっては、株価が2万円割れ寸前まで下がった後に、更に5%下がった25日の株価はかなり驚きであったが、そう思われた方々も少なくないのではないか。
ところで、この2日間で印象的だったのは、テクニカルアナリストと言われる人たちや、ストラテジストと言われる人たちの動きである。前者の中で、ずっと強気だったにもかかわらず、株価が19,000円台前半を割ったことを理由に、弱気に転じた人がいた。後者の中にも、上記2日間の動きを見て、顧客にかたっぱしから電話をかけて弱気の意見を述べてまわった人がいると聞いた。私は、運用しながら、「こういう人たちは気楽でいいな」と改めて感じた。ここでは詳しく述べないが、私は、こうした人たちの意見から一線を画す形でこの年末に強気に転じた。一方、こうした人たちの意見を信じた人たちは、12月は、株価が下がり続ける中で一生懸命耐えていたが、25、26日の株価のボトム圏でポジションを落としてその後の相場上昇に乗り遅れ、往復ビンタを食らった形になったはずだ。
その後、年明け直後の海外マーケットで104円台の円高を見せつけられて、日本中が円高恐怖症に陥り、最近でも新聞の論調も含めて円高リスクが堂々と喧伝されているが、為替は112円近くまで円安が進むに至っている(3月1日現在)。その結果、1月、2月と株価が世界的に堅調に推移したことは、説明するまでもなかろう。
また、最近の一部メディアの記事を見て驚いたのは、日経平均株価がPER12倍台まで上昇して割高感が出てきたと述べていたことだ。昨年の株価下落前は、PERが12-13倍台しかなくて、世界市場対比で割安だと多くの人が言っていたはずだ。
ところで、昨年末に、ある証券会社で多くのアナリストが順番に今後の株価見通しを話すイベントがあった。そこで、私も尊敬するある高名なアナリストが「直近の見通しが外れて申し訳ない」と何度も語っていた。私は、自分の示した投資スタンスが間違ったことに謝意を述べる勇気と客観的スタンスに大変感銘を受けたが、これはごく稀な事例である。多くのアナリストやストラテジストは、自分の見通しが外れても全く意に介していないように見える。
もちろん、アナリストも人間だから外れても仕方がない。投資の世界にいる私だって、これまでに多くの個別銘柄の見通しを外してきた。しかし、投資判断の5割以上が外れたら、運用の世界にいられない可能性が高い。投資の世界では、6割の投資判断で勝利を収めれば、恐らく大勝できるであろう。そのような厳しい世界にいる中で、昨年12月から2月にかけて(というか、昨年も強気の人が多くて予想を外したが)、市場関係者の見通しがやけに外れまくっていると感じるのは私だけであろうか?やはり、自分の身は自分で守るしかない。
大木 将充