No.0057

5Gが牽引する今年中盤以降の株式市場

世界的に5Gが話題だ。大容量・高速化、多数同時接続、低遅延という三大特長を有する5Gは世の中の流れを大幅に変える可能性がある。
 しかし、日本の株式市場を見ると、5Gというテーマはまだ盛り上がりに欠けているように思われる。その理由は2つあろう。
 第一に、直接的に5Gに関連する銘柄が少ないこと。アンリツ、アルチザネットワークス、NECなどが代表的関連銘柄だが、逆に言えば関連銘柄の裾野があまり広がっていないように見える。ど真ん中の関連銘柄のアンリツが、4月に高水準の設備投資を背景とした失望を呼ぶ決算を発表したことも、今後のネックになりかねない。
 第二に、5Gの環境が整ったとしても、それを十分に生かしたコンテンツやビジネスモデルが明確に見えていないこと。ここ2-3年、世界的なスマートフォンの普及と、機能の成熟を背景に、スマートフォンの買い替えサイクルが長期化し、それが半導体市場低迷の一因となっている。そして、今年に入り、5G機能搭載のスマートフォンが発売され始めたが、電子部品のアナリストは、スマートフォンの売れ行きについて慎重なスタンスを崩していない。
 かく言う私も、5G環境をフルに生かした世界経済の姿が見えているわけではない。しかし。個人的には、断片的にではあるが、5Gの潜在的威力の凄まじさを感じている。例えば、自動運転や、その前段階の遠隔操作を通じた自動車運転の実現には、5Gの「低遅延」という要素が不可欠だ。また、これまでに通期決算発表を終えた企業の説明を聞く限り、5G搭載のスマートフォン端末への期待は小さいため、仮にコンテンツを伴って端末販売が好調に転じ、買い替えサイクルが短期化すれば、それは広い裾野を伴った上で、広く半導体業界にポジティブな影響をもたらすことになる。
 ちなみに、専門家の意見を聞く限り、5Gを有効活用が目に見える形で表れる分野は、コンシューマー分野ではなく、商用分野であるように思われる。それが、5Gを使ったビジネスモデルをイメージすることの難易度を上げているように思う。逆に言えば、多くのアナリストやファンドマネジャーが5Gの威力を具体的に実感できるようになった段階では、投資を通じたアルファ収益の拡大は既に難しいように思われる。
 世界的に、アクティブファンドは、現在の株価上昇の波に乗り遅れているように見える。そのことに、5Gという、各産業の収益化のイメージが容易でないテーマを加えて考えてみると、今年は、ベータリターン・アルファリターン共に、ファンドによって大きな格差がつくような予感がしている。

大木 将充