企業名は伏せるが、ある企業の傘下にある「ふるさと納税サイト」運営子会社にまつわる話を聞いて、複雑な思いを抱かざるをえなくなった。その話によれば、日本にはいくつかの「ふるさと納税サイト」があるが、多くの場合テイクレート(取扱高に対するサイト運営会社の取り分)が10%前後もあるらしい。そして、その企業が、ふるさと納税サイトを運営する某会社を子会社化したが、その子会社の社長は清廉潔白な人で、テイクレートを2%前後の現水準から引き上げることに躊躇しているという。その中で、親会社は、他のサイト運営企業との比較で子会社のテイクレートが低すぎるので、その水準を徐々に引き上げたいと考えている。
この親会社の株主の立場からは、このストーリーは、親会社連結業績の増益確度を高めるという意味で大変に魅力的である。しかし、一日本国民として見ると、別の感情を抱かざるをえない。元々は個人が地方税として払ったお金から、10%もの手数料を受け取るというのは、その原資の性格上、行き過ぎな高率ではないかと思えたのだ。今、ふるさと納税については、特定の地方自治体の高額すぎる返礼品に目が向いているが、この返礼品の問題は、個人の地方税の支払総額との対比で見ると、全地方自治体ベースでの受取税収が、ふるさと納税を通じた返礼品の負担分だけ減っているというところに根本的課題や矛盾を抱えていると思う。そのロジックが正しければ、ふるさと納税サイトを運営するテイクレートの在り方についても、返礼品の在り方と同列に議論すべきではないかと思われる。
あくまで個人的感覚であるが、政府がクレジットカードの手数料を3%前後以内に規制しようとしているのであれば、ふるさと納税サイトのテイクレートにも、それと近い規制(または税収という公的資金という側面を考慮したより厳しい規制)を入れるべきではないかと思われる。地方の衰退が言われて久しいが、こんな部分にも、地方再生の鍵が隠れているのはなかろうか。
そして、このケースは、株主と一般国民との間の利益相反を孕む事象の一例に思える。このような場合こそ、政府が積極介入して、一般国民の利益を優先すべきではないかと私は考える。この考え方は、私が私自身について、ファンドマネジャーという属性よりも、日本国民という要素を優先させていることの表れである。この点は、私の揺るがない信念である。
大木 将充