「会社」の定義の重要要素の中に、「営利を目的とする」ことが含まれることには異論がなかろう。端的に言えば、会社は「儲けてなんぼ」の存在なのだ。然るに、今の株式市場では、この基本原則がわからない人が嘆かわしいほど多すぎると感じている。
この観点から東芝の経営陣を見てみよう。取締役12人のうち、社外取締役が10人。社内の2人のうち、車谷氏は銀行出身で、綱川氏のみが東芝出身者である。つまり、端的に言えば、事業内容を肌感覚で理解できている人が、ほとんど存在しない役員構成になっているのだ。別の言い方で言えば、東芝の役員は、コーポレートガバナンスと株主還元に過度に傾斜した布陣なっていると言わざるをえないのだ。しかし、ガバナンスの問題は、端的に言えば「儲ける姿勢」の問題だし、株主還元は「儲けの分配」の問題にほかならない。世界中の圧倒的大多数の企業が苦しんでいることは、そんな問題ではなく、「儲けること自体」「儲け方(ビジネスモデル)の確立」なのである。
つまり、東芝の経営陣に、東芝という会社インフラを使って「どう儲けるか」という観点からのプロフェッショナルがほとんど存在しないのだ。
以前のレポートで言及したことがあるが、非上場の中小企業でROEを注視している経営者は、ほとんど存在しないと思う。なぜなら、毎期損益を黒字にしたり、黒字基調を維持するためのビジネスモデルを構築したりすることに精一杯だからである。
こう考えていくと、株式市場の関係者が偉そうに語る、コーポレートガバナンス、株主還元、ROEのような要素は、企業一般にとって必ずしも普遍的重要性を帯びるテーマではないことが窺えよう。世界に存在する圧倒的多数の企業にとっては、どうでもよい問題であり、わずかに株式を上場している会社にとって重要なテーマにすぎない。
つまり、現在の東芝は、上場企業として重要視される側面に過度に傾斜し、上場か非上場かを問わず、広く企業一般にとって重要な要素をないがしろにしているように私には見えるのだ。そんな会社に、未来があるとは思えない。シャープやジャパンディスプレイのような道をたどることがないように祈るばかりだ。
大木 将充