No.0079

金融市場で最も重要な市場は「金利市場」…今後の株価継続的上昇の前兆

2019年は、米中貿易摩擦に金融市場が振り回された1年であった。摩擦が悪化すると、市場のみならず実体経済のセンチメントも悪化して、受注も売上も不振となる一方、摩擦が緩和すると、市場も実体経済もセンチメントが改善し、受注が復活するという、極めて予想が難しい状況にあった。
しかし、この事象をもう少し巨視的に見ると、センチメントによって実体経済が良くも悪くも変化するということは、実体経済自体はそれほど悪くないということに気付く。それにもかかわらず、金融市場はリスクオフムードが強まり、9月初旬には米国10年債金利が1.4%まで低下した。2019年終盤にある現在も、米中摩擦に左右される状況にあるが、これは2020年にも引き継がれる状況であろう。そうなると、今後の予想は、困難を極めることは否定しがたい。
しかし、米中摩擦は慢性疾患のようなものなので、今後も、それを反映して市場と実体経済も良くなったり悪くなったりを繰り返すことになろう。そうであれば、この要素を中立条件と置いた上での予測を基本線とすれば良いのではなかろうか。
その場合、私は、「金利市場」と「実体経済」との照らし合わせから、思考をスタートすべきだと思っている。なぜなら、金融市場の中で、最も重要で、かつ、各種動きの始点となるのは「金利市場」と考えているからだ。そうであれば(タームプレミアムという要素の方を捨象して考えると)、米国の名目成長率を3%前後と考えれば、米国10年債金利が9月初旬に1.4%まで低下し、現在でも1.8%前後にとどまっていることは、「常識的に考えて」低すぎると考えられる。タームプレミアムの大幅マイナスを考慮しても、2%台前半くらいの水準まで上昇しても不思議ではない。仮にそれが正しければ、金利水準が2%を超える水準になるまで債券が売られ、それを売って得られたお金が、株やコモディティのような市場に流れ込むことになるであろう。
つまり、米中貿易摩擦のノイズを中立化すると、自然と債券安・株高の流れが浮かび上がってくる。しかも、これから、ドイツ、米国、日本では公共投資の拡大の可能性が高く、中国でも民需引き上げの措置が取られると予想されるが、それらは全て金利上昇要因(債券売却要因)である。 このように考えていくと、年末から2020年前半にかけてのマーケットは、株高の可能性が高いように思われる。これに対する反論として、米中摩擦の激化はあろうが、それは、株高という「基調シナリオ」に対する波乱要因として、「副次的」に考慮していく要因と捉えるべきであろう。「主」と「副」を逆転させてはならない。
そんなわけで、私は来年の前半までは株高を予想している。

大木 将充