No.0084

5Gで思う日本の「後進国」化

5G関連銘柄が、昨年から引き続き注目を集めている。一方で、懐疑的見方も根強く残っている。その論拠は、大きく2つに分けられると思われる。
第一に、日本では5G実現に必要なインフラが整備されていない。
第二に、5G環境が整ったとしても、それが実体経済に及ぼす効果が見えない。
それらは、必ずしも間違った見方ではなく、私自身も具体的にどのような分野でどのような効果が出るのかは良くわからない。しかし、中国や韓国に目を転じると、日本と状況がかなり違うことが実感できる。両国では、5Gのインフラ環境が整いつつある上に、携帯端末メーカーが5G対応端末を投入し、今後の量産体制に備えている。つまり、中国と韓国では、5G端末を使った生活が始まりつつあるのだ。
ここで、再度、日本に目を転じてみよう。5G環境は遅々としてすすまず、日本の端末メーカーは5G対応端末を販売していない。
このように他国に遅れた環境にある中での「5Gで何を実現できるのか?」というような想像力貧困な疑問は、「百聞は一見に如かず」という諺で一蹴されうるものだと考えるべきであろう。「一見」している中国と韓国が、「百聞」に止まる日本に対して、5Gの応用力で日本を大きく引き離す姿が目に見えるようだ。
こう考えていくと、「ガラパゴス携帯」とか「島国根性」といった言葉で局所的に表現されてきた「日本の後進国化」が、いよいよ広範囲で現実化しているという懸念を禁じ得なくなる。
そのような国で、現実の運用リスクも取らず、偉そうに金融市場の蘊蓄を語る在野の日本人評論家の話は、現在でも私の運用にはほとんど役に立っていないが、益々使い物にならなくなると感じている。最近は、運用会社の運用報酬が高すぎるという意見が、色々な評論家たちからまことしやかに語られているが、本当に報酬が高すぎるのは一体誰なのかを考えるべきであろう。

大木 将充