私は、本質的に、バリュー株とグロース株という区別は好きでない。理由は、その区分けが人工的かつクオンツ的で、一般的な「グロース(成長)」や「バリュー(割安)」という言葉の意味と、大きな乖離があるからだ。余談になるが、法学部で法律を学ぶ中で、法律用語と一般用語の違いに最初に直面する場面は、「善意の第三者」という言葉ではないかと考える。言うまでもないが、法律的には、「善意の第三者」とは、「良い人」という意味ではなく、「行われた法律行為の事情を知らない人」ということであるが、株式市場で言う「グロース株」と「バリュー株」の意味は、法律における「善意の第三者」と同じくらい、日常用語と意味がかけ離れているように思えるのは、私だけであろうか。
いずれにしろ、バリュー株とグロース株のリターンは、過去10年くらいで見ると、2018年末までは似通った数字になっていたが、2019年の前半頃から、グロース株優位となり、2020年のコロナウィルス問題勃発で、グロース株優位が決定的となった。コロナウィルス問題で、従来の伝統的ビジネスに関するビジネスモデルの多くが破壊されたことに鑑みれば、ある意味では仕方ないことであろう。
しかし、コロナウィルスについては、次第に実像が見え始め、端折って申し上げると、持病を持つ人と、60代以上の高齢者を除けば、感染しても重症化するリスクが少ない病気という見方が適切であるように考えられる。
そうであれば、経済は必然的に、元に戻っていくことになる。旅行については、海外は別としても国内旅行をする人数は元に戻るであろうし、外食も大人数の飲み会は別としても数人の飲み会は普通に戻るであろう。ディズニーランドやUSJには人が溢れ、人気映画は満席になり、コロナウィルス問題で肥満化した人たちは健康を求めてフィットネスクラブに殺到するであろう。これから活況を取り戻すことが予想されるこれらの業界の株が、これまでに叩き売られてきたのであるから、経済が正常化すれば、それらの株価は元に近い水準に戻って然るべきであろう。これが、バリュー株が戻ると考える根拠である。そして、バリュー株は、ただ漫然と戻るとは考えにくい。今年に入って、グロース株優位が2月から8月まで比較的長い期間にわたって、凄まじい勢いで展開されたことを考えると、これからのバリュー株の戻しの速度も幅も、凄まじいことになるのではないか。
それが当たるかどうかは、わからない。しかし、このような予測が、テクニカル分析を妄信する人や、過去の事例との対比で相対的にしか物事を見ることができないアナリスト・ストラテジストから出てきにくいことは、強く指摘しておきたい。
大木 将充