1989年から2009年までアナリスト業務に携わり、専ら他の方々に自分の書いたアナリスト・リポートを読んで頂く立場に属していた。しかし、それは、「株式市場の分析のプロ」として、「株式市場の運用のプロ」の方々に読んで頂くという構図だった。その形態の下では、ある程度のわかりやすさは意識しつつも、内容の正確性や分析の深さの方がはるかに重要なポイントであった。語弊を恐れずに言えば、読み手が読んで理解できない場合は、読み手の側がその水準まで目線を引き上げてでも理解できるように努力すべきという考えさえ成り立ちうるような状況で、私はレポートを書いていた。
しかし、本の出版においては、事情が全く異なる。本の書き手は、内容の正確性や分析の深さも重要だが、いかなる立場にある読み手の皆様にもわかってもらえる表現を尽くすべき状況に置かれている。今回、本を執筆するに当たって、最も細かい神経を注いだのはその点であるが、十分な効果を発揮できたかどうかについては自信がない。
ところで、本が出版されると、書籍販売店で自分の本がどのような扱いを受けているかにどうしても目がいってしまう。私は、一般人の皆様から見れば、完全に無名の人間であり、その中で本を買って頂くためには、様々な工夫が必要になる。その点で、私が幸運だったのは、講談社という有名かつ一流の出版社から出版できたことだ。大変優秀な編集担当者に支えられながら、全国的な新聞広告を二回も打って頂いた。どんなに感謝しても感謝しきれない。
また、ドイツ証券時代の同僚の杉村太蔵さんに新聞広告で応援コメントを頂いたり、行きつけの美容院の奥津宏美さんに休みの日に無理を言って写真撮影のヘアメイクをして頂いたりもした。さらに、日頃お世話になっている証券会社のセールス、トレーダー、アナリストの多くの皆様からも、ご連絡を頂いたり、購入して頂いたりもした。
以上のように、今回の本の出版を通じて、私が日々極めて多くの皆様に支えられていることを改めて実感できた。この場をお借りして、これまで支えて下さった皆様、本を購入して下さった皆様に心より御礼申し上げます。これを励みに、これからもファンドマネジャーとして全力を挙げて、お金を預けて下さっている皆様に報いることができるよう頑張って参ります。
大木 将充