米中摩擦の悪化、2018年10月の米国10年債金利の3%超え、政策金利引き上げを背景に、2018年12月に、株式市場が世界的に大きく下落した。この時は、年末要因も重なり、ほとんど買いが入らない展開になり、特に、もともと流動性が劣る中小型株のダメージは大きかった。この時は、中小型株に少しでも売りを入れると、それがダイレクトに株価下落を促すことが目に見えるような形になり、売るに売れない状況であった。
私は、その時までは、自分が有望と感じる株であれば、一日の取引ボリュームとの対比で少しくらい多めに保有しても良いと考えていた。しかし、中小型株を数日かけても処分しきれない状況に直面したことを教訓として、それ以降、その考えを捨て去ることにした。そして、どんなに有望と思われる銘柄でも、基本的には一日で、例外的な場合でも2~3日で、完全に売却できるポートフォリオを構築することにした。
その場合の難点は、中小型株相場が来る場合に、リターンが劣後する可能性が高いことである。しかし、ファンド運用者の立場からは、強い相場に乗ってリターンを極大化することと同じくらい、株価急落の局面で特定銘柄のポジションを落としリターンの悪化を極小化することが重要だと考えられる。それにより、運用者の立場からは起こって欲しくはないが、相場のリスク顕在時に多くの解約が一気に発生したとしても、保有銘柄を適切に売却して投資家の皆様にお金をスムーズにお返しすることが可能となるのだ。
私が運用するMASAMITSU日本株戦略ファンドは、仮に資金の100%を個別株で運用しているような場合でも、平常時であれば8~9割、ある程度のリスク顕在時でも6~7割の株を一日で売却できるくらい流動性を高めている。そして、これから残高が増加しても、そのポリシーを維持することに努め、それが維持できないレベルまで残高が増えたら、募集を止めることを想定している。
仮にある投信において一日で残高の2~3割の解約請求が起きて、その投信が1日で保有銘柄の2~3割を売却(現金化)できない場合には、解約に完全に対応できない深刻な状況に陥る。MASAMITSU日本株戦略ファンドは、そのような危機発生のテールリスクを意識した運用を行っている。
弊社の投信に限らず、日本株投信を保有している皆さんは、今保有している投信で大量の解約が発生した場合に、ファンドマネジャーがしっかりとそれに対応できて自分のところに現金が戻ってくるかどうかをチェックした方が良いと思う。
大木 将充