テレビで、高齢者が街中でコロナウイルス蔓延について聞かれて、「怖い」とか「徹底した外出自粛を促すべき」とか言っているのを目にすることがある。「それなら、あなたは何で外出しているのだ?」と突っ込みを入れたくなるのは私だけではないだろう。
4月21日までのデータであるが、コロナによる累計死亡者9,034人のうち、70代以上は8,011人で全体の89%を占める。60代の670人を加えると96%、50代の206人も加えると98%を占める。これだけ見ても明らかであろう。逆に言えば、40代以下の人たちは、コロナに感染しても死亡率は陽性者の0.03%(陽性者1万人のうち3人)と極めて低い。実際の陽性者数は、無症状者も多く存在すると思われるので、検査で陽性とされた人の数より遥かに多いと推測されることから、それを考慮した死亡率は0.01%程度ではないかと考えられる。
このようなエビデンスがある中で、なぜ国民全体が外出自粛を行い、外食の時短や酒類提供制限を行う必要があるのか。国民経済の犠牲が少ない有効な対策としては、60代以上の高齢者の外出自粛と、家における高齢者の隔離で十分なのではないかと思われる。これに対しては、コロナウイルスの変異で重症者が増えているとか、急激に症状が悪化する怖さがあるとか、若者で症状が出る人たちが増えているといった指摘には、真摯に耳を傾けるべきであろう。
しかし、自分の体験に照らすと、まず私は30代の時に二年連続でインフルエンザにやられたことがある。その時は、いずれも、1~2時間でみるみる体調が悪化し、3~4日間は39度台の熱が続き、咳で会話もできず、100m先の病院に行くまでに10分近くかかるほどひどい症状だった。高齢で罹ったら、死んでいたかもしれないと思ったほどだ。2019年には、何度検査してもインフルエンザの陽性反応が出ないのに37~38度の熱が続き、約10日間寝込んだことがあった。そうした症状との比較で、現在のコロナウイルスの症状は有意に深刻なのかどうかは明らかでない。冷たい言い方になるが、各種ウイルスによる人間の体調の悪化は、完全に防ぐことはできないので、だからこそ重症化しやすい高齢者に絞った対策の方が有効に思えるのだ。
穿った見方をすると、国や地方自治体、会社、病院などの組織のトップの多くは60代以上である。その人たちが、後進に道を譲らず、現在の地位にしがみついていることが、不合理な一律制限につながっているという可能性はないのであろうか。しかも、ワクチン接種率が世界最低水準にあることを含めたコロナ対策が、コロナ発生から1年以上経過してもまだ確立していないということは、明らかに日本における各種組織のトップの責任であろう。
私は、このようなデータや状況の中で、若い人たちに是非声を挙げてもらいたいと願っている。生物学的事実として、国民に行動規制を強いている組織トップの高齢者よりも、その制限を受ける側の若い人たちの方が、これから長く生きるのだ。仮に自分が組織のトップにいたらどのような施策を打つかを一生懸命に考えてそれを堂々と示し、それが今の施策と大きく異なるのであれば、自分が今の組織のトップに成り代わるくらいの気概を持ってほしい。
1995年頃から2000年代前半まで続いた就職氷河期の時代に就職した人たちの中には、たまたま自分が就職するときに不況であったという不運を今でも引きずっている人が多いとよく聞く。今回のコロナ問題でも、この1~2年をコロナで台無しにされた若い人たちは、その影響を今後10年20年と引きずる可能性があることを、よく認識する必要があると思う。その上で、間違っていると思う政策に対しては、遠慮なく声を挙げるべきだ。日本の高齢者は、残念ながら、今後の日本を支えるあなた方の未来を考えようとする意識に欠けていると言わざるをえない。
大木 将充