従来から、世界的に株式市場がリスクオフ的な状況に陥ると、震源が他国にあっても日本株が震源国の株以上に売られることが散見された。それは、「日本株のボラティリティの高さ」という言葉で片付けられることが多かった。しかし、現在のように、世界的な株価下落時には日本株がより大きく下げる一方で、米国株などの堅調推移の中でも株価が低迷する状況は、ボラティリティの高さという一言では説明がつきにくいと思われる。重要なことは、その背後に何があるかということだ。
それを解くカギは、「日本株の世界的な不人気」と「日本株の流動性の高さ」にあると私は感じている。
まず、「日本株の不人気」は、データで表すことは難しいが、多くの人が実感していると想定される。例えば、日本人の株式投資の物色対象が米国に向かっているという流れは否定できないであろう。当事国の国民に人気のない株が、世界的に注目を集めるはずがないのだ。
一方で、「流動性の高さ」は一般論として強い武器である。ポジションを容易に構築したり解消したりできることは、投資家の立場からすると投資のしやすさにつながることは疑いようがない。しかし、皮肉なことに、日本以外の株式市場が注目を集めれば集めるほど、日本株の流動性の高さが、日本株停滞の基盤になっているようだ。例えば、中国株やベトナム株は、成長性の高さという点で相対的に人気が高いと思われる。しかし、流動性が低いため、世界的にリスクオフとなった時に、逃げようと思ってもなかなか逃げられないという決定的難点がある。そのリスクヘッジ手段として日本株が使われているように推測されるのだ。つまり、中国株を買うことに加え、その購入量の何割かを日経平均先物やTOPIX先物で空売りすれば、中国株下落時の損失を一定程度補うリスクヘッジになるのだ。しかも、今年に入って、米国での金利急上昇やFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策変更などのマクロイベントが頻発しているが、そうしたイベントが発生した後にリスクヘッジとして日本株が売られているような例も散見される。つまり、平常時に「抽象的リスクに対するヘッジ手段」として日本株が空売りされるのみならず、重要イベント発生直後に「具体的リスクに対するヘッジ手段」として日本株が空売りされているようなのである。
仮にこの仮説が正しいとすれば、今年2月以降に米国金利上昇のリスクが高まったり、FRBのテーパリング(量的緩和策の縮小)への警戒感が高まったりする中で、日本株が米国株下落時に米国株より大きく下げ、米国株上昇時には上がらないことの説明がつく。
この前提の下で、日本株が上昇する条件は何かと考えると、一つしかない。「日本株独自の上昇要因」の発生時である。この時には、世界的にロングオンリーの投資家が日本株を買いに来る上に、リスクヘッジとして日本株を空売りしている投資家は、空売りを買い戻すだけではなく、別のショート候補を探しながら一転してロングポジションに日本株を組み入れる必要性が出てくる。つまり、ロングショート戦略の投資家には、日本株の「空売り買戻し+ロングポジションへの組み入れ」という形で、ロングオンリーの投資家と比較すると、二倍の日本株の買い需要が発生するのである。その時には、恐らく日本株は爆騰するであろう。私は、「第一四半期の好決算+東京五輪の無事通過+衆院選での与党勝利」が合わさるときに、それが実現する可能性があると見る。それは今年の夏か秋になるのではないかと考えている。
私は3月に「日本株爆騰!80年代バブルを超える大相場が来る」という著書を出版したが、その実現までもう少しのところまで来ているように感じる。
大木 将充