No.0137

今年中盤以降の株式市場の変貌

 私は年初来、年末の日経平均株価見通し35,000円を維持してきた。しかし、7月末までの弱い株価の動きを見て、まずは30,000円くらいの水準を目指す形に微修正することにした。
 もともと私は、3つのリスク(世界的金融緩和縮小+米中摩擦+新型コロナウイルス収束までの残存リスク)を念頭に置いて、株価の行方を見てきた。そして、金融政策引き締めのリスクは強い経済活動が相殺し、米中摩擦は米中軍事衝突のリスクが否定できないにしても確率の低いテールリスクと見ていたし、変異種リスクを含むコロナウイルス問題も、ワクチン接種比率上昇などにより時間が解決する問題だと思っていた。
 しかし、最近では、衆院選、中国政策リスク、日本企業の来期成長鈍化懸念の3つの新たなリスクが急速に台頭しているように思えてきた。つまり、考慮すべきリスクファクターが6つもあるという状況だ。
 都議選における自民党の実質敗北とそれ以降の政治運営を見ると、今秋の衆院選における与党敗北のリスクは日々高まっているように思える。中国政策リスクは、中国当局によるネット企業への規制強化、不動産市場の引き締め強化、学習塾規制の形で顕在化して世界の株式市場を7月終盤に揺るがした。実際に、対象業界のみならず、広く中国株式市場、中国関連株への懸念拡大につながる恐れが出てきている。常識的には局地的な規制にとどまろうが、これがシステミックリスクに繋がる可能性には注意すべきであろう。来期成長鈍化懸念は、第一四半期決算での高成長企業の株価が売られる形で、散見されつつある。私は、第一四半期決算は、期初に各社から示された強含みの通期ガイダンスが市場に強い納得感を与える契機になると考えていたので、ここまで早い段階で来期を先取りすることは想定外であった。
 そうこうしているうちに、中国企業の米国上場に関する規制強化の動きや、五輪期間中の日本国内でのコロナウイルス陽性者の急増という形で、米中摩擦と新型コロナウイルス収束までの残存リスクという、従来からのリスクも増大している。
 そのような環境下、私は6月中旬以降、日々の運用におけるストレスが過去との比較で明確に高まっている感覚を否定できない状況にある。それは、単に、強気の株価見通しの微修正を迫られたからという単純な理由ではなく、金融市場が何かこれまでとは違う得体の知れない空気に満ちているように感じられるのだ。それが、単なる感覚なのか、根拠を伴うものかは、今後自分の中で明らかにしていきたい。ただ、現在の日本株があまりに過小評価され上値余地が大きいと私は判断している。それを最重視した運用は継続していきたい。

大木 將充