7月21日のほぼ同時刻に開催された日本電産と良品計画の会社説明会は、大変興味深かった。
まず、日本電産については、新社長の関氏が大半を取り仕切る形になった初の説明会であった。同社の業績が好調に推移しているのは、衆目が一致することで、決算説明会を経たうえでのアナリストのコメントも概ね好意的なもので溢れていた。しかし、私は、日本電産の一時代が終わったという感覚を強く覚えた。一見すると、車載事業の拡大の流れの中で、自動車業界の経験が長い関社長が舵を取る日本電産の盤石な業績は揺るがないように思える。しかし、車載事業の拡大の道を切り開いたのは、永守会長だ。「道を切り開く」のは「流れに乗る」ことより何十倍も難しいと思う。更に、永守氏中心の説明会との比較で、関氏中心の今回の説明会が、何となくボヤっとしたものに思えた関係者は私一人ではなかろう。もっと端的に述べると、「カリスマ性の消失」である。その感覚に照らすと、PER(株価収益率)50倍前後という高いバリュエーションが気になってくるのではないか。今回の説明会後の日本電産株の鈍い動きの理由については、個々の投資家が検証し直す必要があるのかもしれない。
一方で、良品計画は、堂前新社長のお披露目の場となった。その説明会を経た上でのアナリストの反応は、はっきり言って消化不良という印象で、明確な判断を敢えて先延ばしにしている感を拭えなかった。しかし、私は、堂前氏の論理的かつ説得力ある説明に聞き入った。マッキンゼーでのコンサルティング経験、ファーストリテイリングでの役員経験、良品計画での役員経験が十分に反映された中期計画説明会に思えた。細かい解説は省くが、株式市場が待望していた「カリスマ性に溢れた経営者誕生」の瞬間に思えた。
総じて言えば、あくまで私の感覚だが、7月21日に日本企業の「カリスマ経営の興亡」の実例を見たような気がしている。PER50倍の日本電産とPER20倍弱の良品計画のバリュエーションが3年後にどうなっているか、大変興味深い。
大木 將充