No.0141

「噂で売って事実で買われる」日本株の今年の大団円は株高では?

昨年後半から今年前半までの相場上昇期を経た後、今年4月頃から一転して日本株の停滞が続いている。その中で私が気になっているのは、その停滞期間において、何らかのリスクやイベントについてまずは懸念が先行し、それに関する事実が明るみに出ると相場が落ちつく傾向にあることだ。2月頃から台頭した金利上昇懸念についても、その背景にあったインフレ率上昇やFRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和縮小に対する懸念が実際に現実化した後に、金利はむしろ低下した。FRBがテーパリング(量的緩和政策の縮小)を進める過程での米国株停滞懸念も、テーパリングの蓋然性が日々高まる中で最高値更新が続いている。日本でも、横浜市長選の与党候補の敗北懸念が色濃くなる中で株価は上値が重くなったが、実際にその通りのネガティブな結果が生じた後には、日本株は逆に堅調推移となっている。
相場では、良く、「噂で買って事実で売れ」と言われる。それは、必ずしも無視できない格言で、最近良く言われる「材料出尽くし」とも繋がる考え方だと思われる。この第一四半期決算でも、好決算銘柄が、市場の予想通りであったり、逆に来期の減益リスクを想起させたりして、売られる例が散見された。
ところで、この格言を、現在の日本株に当てはめると、「噂で売って事実で買え」というような構図が続いている気がしている。今年に入って、ロビンフッド問題、金利上昇懸念、米投資会社アルケゴス問題、ワクチン接種の遅滞、中国の規制リスク、アフガニスタン問題などのネガティブ要素が、市場を揺らしている。しかし、その懸念が市場で十分に共有・顕在化された後は、株価が戻るという状況が続いているように思われる。その理由は、上記のようなネガティブファクターが目まぐるしく発生する中で、根底では、各国金融当局による金融緩和的政策やそれを背景にした企業の好業績という、確固たるファンダメンタルが岩盤のように根を張っているからだと私は推測している。
私は、今年終盤に向けて、日本株が克服しなければならない3大問題は、第一に新型コロナウイルス問題、第二にFRBの金融引き締め、第三に衆院選だと考えている。ただ、新型コロナウイルス問題が継続すれば金融緩和が長期化し、新型コロナウイルス問題が終息してはじめて金融引き締めに移行することを考えると、上記1と2の問題はトレードオフ的に作用し、市場への影響は概ね中立だと見込まれる。そうだとすれば、最後の難関は衆院選だ。これについては、安易な予断は許されないが、もし与党が過半を獲得できる見通しとなれば、今年の最大かつ最後の懸念払拭という意味で、これまで空売り対象であった日本株について、空売りの買い戻しと、純粋な買いという、巨大な買い需要が発生することが期待される。

大木 將充